肘頭疲労骨折とリハビリテーション

今回は肘頭疲労骨折(Olecranon Stress Fractures)になってしまったときの対処法について書いていきます。

肘頭疲労骨折は肘内側側副靭帯損傷などの既往がある野球選手に多く発生し、復帰まで長期間が必要とされる怪我です。

投球に関係する肘の疲労骨折の中では頻度が比較的高く、悩んでいる選手も多いのではないでしょうか。

再発例も報告されているため、適切なリハビリテーションを行っていく必要があります。

今回はそんな肘頭疲労骨折について解説していきたいと思います!

 

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肘頭疲労骨折とは?

肘の後方にある肘頭が疲労骨折を起こしてしまっている状態をさします(図1)。

 

肘頭疲労骨折
図1:肘頭疲労骨折のイメージ図。肘頭疲労骨折の骨折線は、内側・関節面側から入っていきます。

 

肘内側側副靭帯損傷や、内側型野球肘の既往を持っている選手に発症しやすく[]、復帰を急ぐアスリートは手術療法が適応される場合も多くあります[]。

 

あきと
保存療法の場合も長期の運動休止が必要とされます。

肘頭疲労骨折を起こしやすいシーン

野球などの、反復的に投擲動作を行うスポーツに多く発生します[]。

投球などの行うときの、肘の外反+伸展で肘頭にストレスが加わると言われています。

投球のフェーズでは、後期コッキング期〜加速期、または減速期〜フォロースルー期で痛みが生じます。

あきと
上記のフェーズでの肘の痛みがある場合は早めに病院を受診しましょう。

 

肘頭疲労骨折のよくある症状

肘の後内側が
・押すと痛い
・肘を伸ばしきると痛い
・肘の外反で痛い
・ボールを投げると痛い

肘を伸ばしきった時肘の外反(手を外側に開く動き)で肘の後内側に痛みが生じます。 

あきと
痛みを抱えたままプレーしていると、肘が伸びきらなくなってしまいます。

病院で行う検査

まずはX線検査によって骨折線の有無などを確認します。

X線のみでは確認できない場合もあるため、MRI検査CT検査によって詳細に確認する場合が多いです。 

また、肘内側側副靭帯の緩みを併せ持っている場合が多いため、エコー検査で肘内側の状態を確認することもあります。

 

一般的には、問診(怪我した状況の確認など)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(肘伸展テスト、肘外反ストレステスト、moving valgus stress test)などを行います。

             

肘頭疲労骨折と診断されたら

基本的には保存療法手術療法ともに有効であると報告されていますが、前述したように復帰を急ぐアスリートは手術療法が適応される場合も多くあります[

肘頭疲労骨折
図2:肘頭疲労骨折の手術前後のX線検査画像。Paci JM, et al. 2013 AJSM(文献4)より引用しています。

 

スポーツ復帰する時には「肘を安定させる筋力の獲得」、「肘のみに負担がかからない動作の習得」が必要不可欠です。

そのために、肘頭疲労骨折と診断されたら段階的にリハビリを開始しましょう!

以下に、リハビリテーションの流れを書いていきます。

 

肘頭疲労骨折のリハビリテーション

期間は目安ですので、専門の先生の指示に従いながら自分に合った進め方をしましょう!

 

リハビリを進めるためのチェックポイント!
✅ 腫れ・痛みが悪化していないこと!
リハビリの負荷を上げた時に、「リハビリ中」「リハビリ後」「当日夜」「翌日朝」の悪化がなければOKです!
✅ 肘の曲げ伸ばしがスムーズで左右差がない
✅ 肘の内側・後方の筋肉を鍛える
✅ 肩甲骨・体幹が安定している
✅ ケガをした動作が安定しいて良いフォームである
固定時期(専門医の先生の指示に従いましょう)
・手関節、肩甲骨周囲、頚部筋肉のストレッチ
・肩甲骨・体幹の筋トレ!(←体幹と肩甲骨周囲筋の筋トレ)

あきと
固定期間中も肩甲骨を動かすなどできることはやっていきましょう!
リハビリ前期(肘の曲げ伸ばし可動域の制限がある時期)
・肘の屈曲・伸展可動域を改善する!(←腫れの改善・周囲の筋肉のマッサージ)
・痛みのない範囲で肘内側の筋トレ!(←マイルドな浅指屈筋、尺側手根屈筋のエクササイズ)
・肩甲骨・体幹の筋トレ!(←体幹と肩甲骨周囲筋の筋トレ)

あきと
肘の屈曲伸展可動域の左右差を無くすことが目標です!
リハビリ中期(肘のトレーニング負荷を上げ、動作練習をスタートする時期)
・肘内側の筋トレをレベルアップ!(←浅指屈筋、重りを持って尺側手根屈筋・上腕三頭筋のエクササイズ)
・肩甲骨・体幹の筋トレレベルアップ!(←体幹と肩甲骨周囲筋の筋トレ)
・投球・投擲競技の場合はシャドーで投球フォームのチェック!

あきと
★肘曲げ伸ばしOK
★肘に力を入れても痛くない
そうなったらフォームチェックを開始しましょう!
リハビリ後期(骨の癒合が確認されたら、投球練習を本格的に開始)
・体重をかけたエクササイズをする!(←四つ這いや腕立て伏せなど)
・段階的に痛めた動作をスタート!(←投球・投擲・軽いタックル練習など)

あきと
肘に負担がかかっていないかフォームは要チェックです!
復帰期(全力投球が問題なければ、徐々に球数を増やしていきます)
・1〜2週間かけて段階的に練習に参加しましょう!

あきと
練習後に肘の曲げ伸ばしチェックを必ず行いましょう!
肘が伸びにくい場合は、筋肉をマッサージしてしっかり伸ばしてから次の練習に取り組みましょう!

まとめ

ここまで、肘頭疲労骨折の方針やリハビリテーションについて書いてきました。

肘頭疲労骨折は再骨折なども生じやすいケガですので、基本をしっかりおさえながらリハビリをしていきましょう!

あきと
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参考文献

[1]Fukushima K, et al. : Classification of Olecranon Stress Fractures in Baseball Players. Am J Sports Med. 2014 Jun;42(6):1343-51. 

[2]山崎哲也:成人期の野球肘 -講座スポーツ整形外科2 上肢のスポーツ外傷・障害- 池上博泰 編集. 中山書店. 2022. 164-173

[3]Greif DN, et al. : Olecranon Stress Fracture. Clin Sports Med. 2020 Jul;39(3):575-588. 

[4]Pasi JM, et al. : Cannulated screw fixation of refractory olecranon stress fractures with and without associated injuries allows a return to baseball. Am J Sports Med. 2013 Feb;41(2):306-12.

 

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