肘部管症候群(尺骨神経障害)とリハビリテーション

今回は、肘部管症候群(尺骨神経障害)になってしまったときの対処法について書いていきます。

肘部管症候群は、肘の内側を通過する尺骨神経が肘部管で絞扼され、神経症状が生じてしまうケガです。

野球選手に多く、適切なリハビリを行わないと症状がなかなか改善しない場合もあります。

今回はそんな肘部管症候群について解説していきたいと思います!

 

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肘部管症候群(尺骨神経障害)とは?

肘部管症候群とは、肘部管を走行する尺骨神経が絞扼され、尺骨神経の支配領域に「痛み」「しびれ」「筋力低下」などの症状が現れている状態をさします。

尺骨神経は、手の小指・薬指を支配していますので、その部位にしびれが生じます(図1)。

 

肘部管症候群 尺骨神経障害
図1:肘部管症候群の症状が出やすい部位のイメージ図。肘の内側、手の小指・薬指に症状が出やすいです。

 

 

尺骨神経は上腕の内側から肘内側を走行しており、様々な場所で絞扼されやすくなっています(図2)。

特に内側筋間中隔、Struthers腱弓、肘部管で絞扼されやすいと言われています[]。

 

尺骨神経
図2:尺骨神経と絞扼されやすい部位。内側筋間中隔やStruthers腱弓、中部管内のOsporne靭帯などで絞扼されやすいと言われています。※文献2(Mezian et al. Front Neurol. 2021)より引用しています。

 

 

あきと
若いスポーツ選手の尺骨神経障害は、この肘部管で最も多いと言われています[

肘部管症候群を起こしやすいシーン

野球などの投擲競技選手に多く発生します。

投擲動作では、肘を曲げた状態から急激に肘を伸ばし、胸を張るため、尺骨神経が一気に引っ張られてしまいます。

 

 

肘部管症候群のよくある症状

・肘の内側(〜前腕の内側)が痛い
・手の小指・薬指がしびれる/痛い(図3)
・手に力が入りにくい
・握力が弱い
・投球時にすっぽ抜ける
尺骨神経の支配領域にしびれ、痛みなどの症状が生じます。
尺骨神経障害 手 肘部管症候群
図3:尺骨神経障害で症状が出やすい手の部位のイメージ図。小指・薬指にしびれ、痛みなどの症状が生じます。

病院で行う検査

基本的な診察で尺骨神経症状の有無を確認します。 

レントゲン検査では肘関節の変形や骨形態について確認し、MRI検査では神経の炎症の確認、エコー検査では神経の動きや絞扼の程度(潰れていないかなど)を確認することもあります。

 

一般的には、問診(怪我した状況の確認など)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(Tinel様徴候、肘屈曲テスト)などを行います。

             

肘部管症候群と診断されたら

基本的には保存療法を行います。

一方で、あまりにも絞扼がひどい場合や、尺骨神経の脱臼が頻繁に起こる場合は手術療法を行うこともあります。

保存療法の場合も、手術療法の場合も、スポーツ復帰する時には「尺骨神経が絞扼されてしまった原因を改善」しておくことが必要不可欠です。

そのため、肘部管症候群と診断されたら神経にストレスがかかった原因を見つけ出し、段階的にリハビリを進めていきましょう!

以下に、保存療法のリハビリテーションの流れを書いていきます。

 

肘部管症候群のリハビリテーション(保存療法)

中等度の症状をイメージしてリハビリの流れを記載しています。

期間は目安ですので、自分に合った進め方をしましょう!

 

リハビリを進めるためのチェックポイント!
✅ しびれ・痛みが悪化していないこと!
   リハビリ行ったとき、「リハビリ中」「リハビリ後」「翌日朝」の悪化がなければOKです!
✅ 姿勢が良い
✅ 肘の曲げ伸ばしがスムーズである

✅ 上腕・前腕に筋肉が柔らかい
✅ ケガを誘発した動作が安定しいて良いフォームである
リハビリ前期(安静時でも症状がある、上腕・前腕・手の神経領域を触ると症状が誘発される時期)
・背骨やクビ、肩甲骨のストレッチ!(←姿勢を改善して尺骨神経の走行を良くする)
・肩・上腕・前腕の外側のストレッチ!(←内側を触ると悪化するので、外側を緩めて肘の曲げ伸ばしをスムーズに)
・肩甲骨・体幹の筋トレ!(←姿勢を良くする)

あきと
神経が過敏な場合は触らないことが一番です。
症状が出ない部分からスタートし、まずは一番大切な「姿勢」を改善しましょう!
あまりにも症状が強い場合は、専門医に相談し、薬や注射をする選択肢もあります。
リハビリ中期(日常生活では症状が出ない、神経領域を触っても症状が出ない時期)
・ストレッチは継続!
・肩甲骨・体幹の筋トレも継続!
・神経支配領域の筋肉もストレッチ&筋トレ開始!
・原因となった動作のフォームチェック!

あきと
神経症状が誘発されなくなったら、神経支配領域へのリハビリも積極的に行います!
★ 握力が回復していることを確認しましょう。
リハビリ後期(神経症状の誘発なし、握力が回復した時期)
・段階的に痛めた動作をスタート!(←投球・投擲練習など)

あきと
フォームは要チェックです!
復帰期
・1〜2週間かけて段階的に練習に参加しましょう!

あきと
練習後に神経症状の有無を必ず確認しましょう!(図4)
姿勢が悪くなっていないかも要チェクです!
尺骨神経 尺骨神経障害 Tinel様徴候
図4:尺骨神経の症状チェックのイメージ図。肘内側の骨(出っ張り)の下側を反対の手の指先で数回かるくタップします。神経症状が誘発されなければ問題ありません。この刺激に対して症状が誘発されることはTinel様徴候と呼ばれています。

まとめ

ここまで、肘部管症候群の方針やリハビリテーションについて書いてきました。

肘部管症候群は神経へストレスがかかった原因を解決しないと再び症状が出やすいケガですので、基本をしっかりおさえながらリハビリをしていきましょう!

 

あきと
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参考文献

[1]Mezian K. et al: Ulnar Neuropathy at the Elbow: From Ultrasound Scanning to Treatment. Front Neurol. 2021 May 14;12:661441

[2]西浦康正:尺骨神経障害 -講座スポーツ整形外科2 上肢のスポーツ外傷・障害- 池上博泰 編集. 中山書店. 2022. 148-153

 

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