
この記事では、足舟状骨疲労骨折と診断された、または足舟状骨疲労骨折が疑われる選手・保護者・指導者の方向けに、具体的なリハビリ方法とスポーツ復帰の目安を解説します。
足舟状骨疲労骨折の症状・原因・検査・治療方針など、疾患の概要を知りたい方は、まず以下の記事をご確認ください。
また、「足首・足の痛み全体」について知りたい方は、以下の記事も参考になります。
足舟状骨疲労骨折では、リハビリを頑張る前に骨癒合を最優先に考えることが大切です。荷重開始時期やランニング再開時期は、必ず医師の指示を確認しましょう。
足舟状骨疲労骨折は、足の甲〜内側にある舟状骨に繰り返し負荷がかかって起こる疲労骨折です。ランニング、ジャンプ、切り返し動作が多い競技で注意が必要です。
舟状骨疲労骨折は、レントゲンで分かりにくいこともあり、診断や復帰判断に慎重さが必要です。足舟状骨疲労骨折に関するレビューでは、活動時の足部中央の痛みや、舟状骨背側近位部の圧痛が重要で、画像評価としてCTなどが用いられることが示されています[1]。
そのため、この記事では、骨癒合を妨げないことを前提に、免荷期、荷重再開期、筋力回復期、走行復帰期に分けてリハビリの考え方を整理します。
目次
足舟状骨疲労骨折リハビリの基本方針
足舟状骨疲労骨折のリハビリで大切なポイントは、以下の4つです。
- 骨癒合が確認されるまでは、自己判断で荷重や運動を進めない
- 免荷期でも、患部外トレーニングや体幹・股関節の運動は継続する
- 荷重開始後は、足部アーチと足首・足部の安定性を段階的に戻す
- ランニング、ジャンプ、切り返しは、痛みと翌日の反応を確認しながら少しずつ再開する
足舟状骨疲労骨折は、一般的な捻挫や筋肉の痛みとは違い、痛みが軽くても骨癒合が不十分な場合があります。痛くないから走ってよいとは限らない点に注意が必要です。
足舟状骨疲労骨折315例を対象としたシステマティックレビュー・メタ解析では、315例中307例(97.5%)がアスリートであり、手術療法は108例、保存療法は207例に行われていました。成功率は手術療法で96.3%、保存療法で72.0%と報告され、再骨折は保存療法で23.5%、手術療法で1.3%とされています。一方で、スポーツ復帰率は手術療法で99.0%、保存療法で73.4%、復帰までの平均期間は手術療法で約4.2か月、保存療法で約4.7か月と報告されています[2]。
この結果からも、足舟状骨疲労骨折は痛みが軽くなっただけで復帰を判断するのではなく、治療方針、骨癒合の状態、再発リスク、競技レベルを含めて慎重に判断する必要があると考えられます。
復帰を急ぎすぎず、医師の判断とリハビリの進行を合わせて確認することが大切です。
骨癒合を妨げないための注意点
足舟状骨疲労骨折では、リハビリメニューを増やすことよりも、まず骨が治る環境を作ることが重要です。
荷重開始は医師の許可を優先する
目的:骨癒合前に舟状骨へ過剰な負担がかかることを防ぐことです。
古典的なレビューでは、足舟状骨疲労骨折の保存療法として、少なくとも6週間の厳格な免荷ギプス固定が治療選択肢として述べられています[1]。実際の治療期間や荷重開始時期は、骨折の部位、重症度、画像所見、競技レベルによって異なります。
- 医師の許可前に体重をかけない
- 痛みが軽くても、自己判断で歩行やランニングを再開しない
- 荷重開始後も、痛みや腫れ、翌日の反応を確認する
- 足の甲〜内側の痛みが戻る場合は、すぐに負荷を下げる
栄養・ビタミンD
目的:骨の回復に必要な栄養状態を整えることです。
ビタミンD不足は疲労骨折リスクと関連する可能性が報告されています。ただし、既存文献の中には第5中足骨疲労骨折を対象とした研究もあり、舟状骨疲労骨折だけを直接示したものではありません[3]。
ビタミンDを意識する場合は、日光 exposure、魚類、きのこ類などの食事に加え、必要に応じて医療機関で血液検査や栄養相談を検討しましょう。

低出力超音波パルス・体外衝撃波について
目的:骨癒合を補助する治療選択肢を、医師と相談しながら検討することです。
低出力超音波パルス(LIPUS)は骨折治療の補助として用いられることがありますが、BMJのClinical Practice Guidelineでは、骨癒合に対するLIPUSの有効性について慎重な見解が示されています[4]。使用する場合は、自己判断ではなく、医師の説明を受けて判断しましょう。
体外衝撃波治療(ESWT)は、偽関節など難治性の骨折に対して報告がありますが[5]、すべての舟状骨疲労骨折に標準的に行う治療ではありません。希望する場合は、適応があるかどうかを専門医に相談してください。


免荷期に行うリハビリ
免荷期は、足舟状骨に体重をかけない時期です。この時期は、患部へ負担をかけるリハビリではなく、全身の筋力低下を防ぐことと、復帰に向けた準備を行います。
患部外トレーニング
目的:骨癒合を妨げずに、体力や筋力の低下を最小限にすることです。
- 上半身の筋力トレーニング
- 体幹トレーニング
- 股関節まわりの筋力トレーニング
- 患部に荷重しない範囲での可動域運動
- 医師の許可がある場合の水中運動や自転車など
ただし、足で踏ん張る動きや、足の甲〜内側に痛みが出る運動は避けましょう。免荷期は「足を鍛える時期」ではなく、「骨を治しながら落とさない部分を維持する時期」と考えると安全です。
荷重再開期に行うリハビリ
医師から荷重開始の許可が出たら、いきなり走るのではなく、歩行、足部アーチ、足首・足部の安定性を段階的に戻していきます。
足底のほぐし
目的:足部アーチを使いやすくし、舟状骨周囲に過剰な負担がかかりにくい状態を作ることです。
- 足の裏をボールや青竹踏みに乗せます。
- 痛みが強くない範囲で、足の指をグーパーと10回ほど動かします。
- 場所を少しずつ変えながら、5〜10分程度行います。
※足の甲〜内側に痛みが出る場合は中止しましょう。


アーチの内側ほぐし
目的:内側縦アーチ周囲の柔軟性を整え、舟状骨周囲の負担を分散しやすくすることです。
- 足の内側の筋肉の部分を軽く圧迫します。
- 圧迫した状態で、足の親指をゆっくり曲げ伸ばしします。
- 場所を少しずつ変えながら、5〜10分程度行います。

※舟状骨周囲を直接強く押さないようにしましょう。
内くるぶし周囲のほぐし
目的:後脛骨筋腱周囲の動きを整え、足部アーチを使いやすくすることです。
- 内くるぶしの後方を軽く圧迫します。
- 圧迫した状態で、足首を10回ほどゆっくり動かします。
- 場所を少しずつ変えながら、5〜10分程度行います。

- 荷重開始直後は、痛みがない範囲で行いましょう。
- 足の甲〜内側に痛みが出る場合は、負荷を下げてください。
- 翌日に痛みが増える場合は、時間や強さを減らしましょう。
アーチ機能を整えるリハビリ
足舟状骨は、足の内側縦アーチの要となる骨です。足部アーチが潰れやすい状態では、舟状骨周囲に負担がかかりやすくなります。
そのため、荷重再開後は、アーチが潰れすぎないようにコントロールする力を少しずつ戻していきます。
ショートフットエクササイズ
目的:足部アーチを安定させ、立位や歩行時に舟状骨周囲へ負担が集中しにくい状態を作ることです。
- イスに座り、足の裏全体を地面につけます。
- 足の指はリラックスさせます。
- 踵と母趾球を近づけるように意識します。
- 足の指を丸めずに、足の甲が少し持ち上がる感覚を作ります。
- 5秒キープ × 10回 × 2〜3セット行います。
※うまくできると、足の裏の筋肉を使っている感覚が出てきます。

- 足の指を強く握り込まないようにしましょう。
- 土踏まずを無理に高くするのではなく、足裏で地面を軽くつかむ感覚を意識します。
- 立位で行うのは、座位で痛みなくできるようになってからにしましょう。
足首・足部を安定させる筋トレ
足舟状骨疲労骨折では、荷重開始後も、いきなり強い筋トレや片脚トレーニングに進むのは避けます。まずは座位、次に両脚立位、その後に片脚へ進めるのが基本です。
座位カーフレイズ
目的:舟状骨への負担を抑えながら、ふくらはぎと足部アーチを連動して使う練習です。
- 太もも、すね、足の第2趾のラインがまっすぐになるように座ります。
- 足の指はリラックスさせ、母趾球に体重を乗せます。
- 踵をゆっくり持ち上げます。
- 上げた位置で3秒キープし、ゆっくり下ろします。
- 10回 × 2〜3セット行います。

立位カーフレイズ
目的:体重をかけた状態で、足首・足部の安定性を高めることです。
- 足を肩幅に開き、つま先をまっすぐ前に向けて立ちます。
- 足の指はリラックスさせ、母趾球に体重を乗せます。
- アーチが潰れすぎないように意識しながら、踵をゆっくり持ち上げます。
- 上げた位置で3秒キープし、ゆっくり下ろします。
- 10回 × 2〜3セット行います。

- 足の甲〜内側に痛みが出る場合は中止しましょう。
- 踵を上げる時に、足の内側が潰れすぎないようにします。
- 片脚カーフレイズは、両脚で痛みなくできるようになってから行いましょう。
- 翌日に痛みが増える場合は、回数やセット数を減らしましょう。
走行復帰に向けた体幹・股関節リハビリ
足舟状骨疲労骨折では、走行中に足部アーチが潰れすぎると、舟状骨周囲へ負担がかかりやすくなります。足だけでなく、体幹や股関節を安定させることも重要です。
走り方のポイント
目的:ランニング中に足部アーチが潰れすぎないようにし、舟状骨への負担を減らすことです。

- 姿勢が安定している
- 背骨がまっすぐで、骨盤が大きく横に流れない
- 接地時に足部アーチが潰れすぎない
- 体幹や骨盤が横に流れてしまう
- 膝が内側に入りやすい
- 足部アーチが潰れて、足の内側に負担が集中する
ドローイン
目的:体幹を安定させ、下肢の動きをコントロールしやすくすることです。
- 仰向けで寝て、膝を90°程度曲げます。
- ゆっくり息を吐きます。
- 息を吐くのと同時に、お腹を軽くへこませます。
- お尻の穴を軽く締めるように意識します。
- リラックスして息を吸い、同じ動きを繰り返します。
- 20回程度行います。

バードドッグ
目的:体幹を安定させたまま、股関節と肩まわりを連動して使う練習です。
- 四つばいの姿勢から始めます。
- 肩の真下に手、股関節の真下に膝がくるようにします。
- お腹を軽くへこませ、体幹を安定させます。
- 対角線上の手と足をゆっくり持ち上げます。
- 上げた手と足を前後に引っ張られるように伸ばします。
- 3秒キープ × 10回 × 2〜3セット行います。

膝つきプランク
目的:体幹を安定させ、ランニングやジャンプで下肢に余計な負担がかからない姿勢を作ることです。
- 肘、膝、つま先で体を支えます。
- 背骨をまっすぐにし、骨盤が下がらないようにします。
- お腹を軽くへこませた状態でキープします。
- 10秒キープ × 10回 × 1〜3セット行います。
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痛みがある時に避けたい動き
足舟状骨疲労骨折では、痛みを我慢して進めることはおすすめできません。特に骨癒合前の負荷は、癒合遅延や再発につながる可能性があります。
- 医師の許可前の荷重
- 痛みを我慢した歩行
- 骨癒合前のランニング
- ジャンプや切り返し動作
- 坂道ダッシュ
- 痛みがある状態でのカーフレイズ
- 足の甲〜内側を強く押すマッサージ
- 自己判断での早期競技復帰
特に、運動中は痛みが軽くても、翌日に痛みが戻る場合は負荷が高すぎる可能性があります。運動中の痛みだけでなく、翌日の反応を必ず確認しましょう。
日常生活復帰・スポーツ復帰の目安
復帰時期は、骨折の部位、画像所見、治療方法、競技レベルによって異なります。ここでは一般的な目安を紹介しますが、最終判断は医師の指示を優先してください。
日常生活復帰の目安
- 画像評価で骨癒合、または癒合傾向が確認されている
- 歩行で足の甲〜内側に痛みがない
- 階段昇降で痛みが強くならない
- 片脚立位で足の内側に痛みが出ない
- 日常生活後に翌日の痛みが増えない
ランニング再開の目安
- 医師から走行再開の許可が出ている
- 歩行で痛みがない
- ショートフットエクササイズが痛みなくできる
- 両脚カーフレイズが痛みなくできる
- 片脚立位でアーチを保てる
- 軽いジョギング後、翌日に痛みが増えない
スポーツ復帰の目安
- 片脚カーフレイズで痛みが出ない
- ジャンプ・着地で足の甲〜内側に痛みが出ない
- ダッシュや切り返し動作で痛みが出ない
- 競技練習後、翌日に痛みや腫れが増えない
- 競技用シューズやスパイクで足の内側に痛みが出ない
足舟状骨疲労骨折の復帰では、「痛くない」だけで判断しないことが大切です。画像評価、医師の許可、運動後・翌日の反応を合わせて確認しましょう。
再発予防のポイント
足舟状骨疲労骨折は、痛みが引いても、走行距離やジャンプ量を急に増やすと再発することがあります。再発予防では、足部アーチ、下肢筋力、練習量、フォーム、栄養状態を総合的に見直すことが重要です。
- 急に走行距離や練習量を増やさない
- ジャンプ・切り返し・坂道走を急に増やさない
- 足部アーチを支えやすい靴を選ぶ
- 必要に応じてインソールやテーピングを検討する
- ショートフットエクササイズを継続する
- カーフレイズで下腿筋群の筋力を維持する
- ランニング時に体幹や骨盤が横に流れていないか確認する
- 食事、睡眠、月経、体重変化、ビタミンD不足なども必要に応じて確認する
医療機関に相談した方がよい症状
以下のような症状がある場合は、自己判断でリハビリや運動を続けず、医療機関に相談してください。
- 足の甲〜内側の痛みが続いている
- 歩くだけで痛い
- 足を押すと一点に強い痛みがある
- 腫れや熱感が強い
- しびれや感覚の異常がある
- 荷重開始後に痛みが戻った
- ランニング再開後に翌日の痛みが増えた
- 数週間たっても痛みが改善しない
似た症状を起こす関連疾患
足の甲〜内側の痛みは、足舟状骨疲労骨折以外でも起こることがあります。痛みの場所、年齢、発症の仕方によって考えられる疾患が異なります。
- 有痛性外脛骨:足の内側の骨の出っ張りに痛みがある場合に注意
- 後脛骨筋腱炎:内くるぶし後方〜足の内側に痛みがある場合に注意
- リスフラン靱帯損傷:足の甲の中央付近に痛みがあり、外傷後に歩きにくい場合に注意
- 中足骨疲労骨折:足の甲〜前足部の痛みが走ると強くなる場合に注意
FAQ
足舟状骨疲労骨折は痛みがなければ歩いてよいですか?
自己判断で歩き始めるのは避けましょう。足舟状骨疲労骨折では、痛みが軽くても骨癒合が不十分な場合があります。荷重開始は画像所見や医師の判断を優先してください。
足舟状骨疲労骨折でストレッチやほぐしはしてもよいですか?
医師から許可が出ている範囲で、足底やふくらはぎ周囲の軽いケアを行うことはあります。ただし、舟状骨周囲を直接強く押すことや、痛みが出る動きは避けましょう。
カーフレイズはいつから始めてもよいですか?
荷重開始の許可が出て、歩行で痛みがなくなってから、座位カーフレイズなど低負荷のものから始めます。立位や片脚のカーフレイズは負荷が高いため、段階的に進めましょう。
ランニングはいつ再開できますか?
画像評価で癒合傾向が確認され、医師から走行再開の許可が出ていることが前提です。その上で、歩行、ショートフット、両脚カーフレイズが痛みなくでき、軽いジョギング後に翌日の痛みが増えないことを確認しながら進めます。
LIPUSや体外衝撃波は必ず必要ですか?
必ず必要というわけではありません。LIPUSや体外衝撃波は治療選択肢の一つとして検討されることがありますが、適応や効果には個人差があります。使用する場合は医師と相談して判断しましょう。
再発を防ぐには何が大切ですか?
急な練習量増加を避けること、足部アーチを安定させること、カーフレイズや体幹トレーニングを継続すること、靴やインソールを見直すことが重要です。栄養状態や睡眠も必要に応じて確認しましょう。
まとめ
足舟状骨疲労骨折のリハビリでは、まず骨癒合を最優先に考え、医師の許可に合わせて荷重、歩行、筋トレ、ランニング、競技動作へ段階的に進めることが大切です。
特に重要なのは、痛みがないことだけで復帰を判断しないことです。画像評価、医師の許可、運動後・翌日の反応を確認しながら、安全に復帰を進めましょう。
痛みが長引く場合、荷重開始後に痛みが戻る場合、ランニング再開後に翌日の痛みが増える場合は、自己判断で進めずに医療機関へ相談してください。
関連記事
参考文献
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- Attia AK, et al. Return to sport following navicular stress fracture: a systematic review and meta-analysis of three hundred and fifteen fractures. Int Orthop. 2021;45(10):2699-2710. PubMed ID: 34415421. PubMed
- Shimasaki Y, et al. Evaluating the Risk of a Fifth Metatarsal Stress Fracture by Measuring the Serum 25-Hydroxyvitamin D Levels. Foot Ankle Int. 2016;37(3):307-311. PubMed ID: 26596794. PubMed
- Poolman RW, et al. Low intensity pulsed ultrasound (LIPUS) for bone healing: a clinical practice guideline. BMJ. 2017;356:j576. PubMed ID: 28228381. PubMed
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