【実践編!】膝前十字靭帯(ACL)損傷の「術後初期」リハビリテーション

今回は、ACL損傷のリハビリテーションについて具体的に解説していきたいと思います!

術後リハのポイントは、「腫れの改善」、「可動域の改善」、「膝周りの筋トレ」、「患部外トレーニング」です。

それぞれについて図をつけて説明していきます!

 

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腫れの改善

アイシング

術後の腫れて、熱を持っている状態では、こまめにアイシングをしましょう!

リハビリの途中でも、熱が増えてくればアイシングを挟むなどしてもOKです。

  1. アイシングの氷パックを作ります
  2. 膝のお皿全体を覆えるようにアイスパックを当てます
  3. 10〜20分アイシングをします
  4. 30分~1時間あけ、アイシングを行った部位が常温に戻ったら再度アイシングを行います
アイシング
※写真が無いため、足首の写真になっています。
ポイント!
・30分以上アイシングをすると凍傷になるリスクがあります
・寒冷アレルギー(アイシングした部位が赤く腫れる(膨疹)、かゆくなる)の方は中止しましょう

可動域の改善

具体的な方法は後述します。

可動域を改善させることで、循環が良くなり腫れを改善させることに繋がります。

 

お皿を動かす

具体的な方法は後述します。

お皿の骨の可動性や筋肉でお皿を動かすことで、腫れを循環させます。

 

膝関節の可動域の改善

単に膝を曲げ伸ばしするだけでも良い場合もありますが、膝の可動域がなかなか改善しない人は「膝の向き」や「筋肉の硬さ」が影響している場合が多いです。

そのため、筋肉をほぐして膝の向きを整えてから可動域訓練を行うと効率的だと思います。

順番に解説していきますね。

あきと
ほぐし系のメニューでは、もみ返しといって軽い打撲のような症状が出ることがあります。
慣れていない方は、痛みが強すぎないようにタオルを敷くなど工夫して「痛いけど気持ちいい」「力を抜いてできる」レベルで行いましょう!
もしもみ返しになっても2-3日で改善することが多いです。

あおい
ほぐしでは、硬式テニスのボールほぐし用のボール ラクロスボールが使いやすいみたいですね!

 

膝の向きを整える(大腿骨と脛骨・腓骨のアライメント調整)

①〜③のメニューは必ず行いましょう!

可動域がもう一歩の人、余力がある人は④、⑤も行いましょう!

①大腿筋膜張筋のほぐし

  1. 横向きに寝て大腿筋膜張筋(図の黄色部分)の下にボールを入れます
  2. 「力を抜いて」ボールに乗ります
  3. 10秒間ボールに乗り、場所を変えます
  4. 計5~10分で徐々に場所を変えながら全体的にほぐします
  5. 硬い場所(痛い場所)は入念に行います

 

 

※ほぐす場所がとても大切です!
ほぐし場所の見つけ方は下の図をご参照下さい!
ほぐれるとつま先を内側に向けた時に、軽く抵抗感無く動かすことができるようになります!

 

 

 

②腸脛靱帯・外側広筋のほぐし

  1. 横向きに寝て腸脛靱帯・外側広筋(図の黄色部分)の下にボールを入れます
  2. 「力を抜いて」ボールに乗ります
  3. 膝を軽く曲げると力が抜けて乗りやすくなります
  4. 10秒間ボールに乗り、場所を変えます
  5. 計5~10分で徐々に場所を変えながら全体的にほぐします
  6. 硬い場所(痛い場所)は入念に行います

 

③下腿三頭筋(外側)のほぐし

  1. 長座の姿勢になり、ふくらはぎ(図の黄色部分)の下にボールを入れます
  2. 真ん中より少し外側に乗せると効果的です
  3. 「力を抜いて」ボールに足を乗せます(壁に寄りかかりながら行う方がリラックスしやすいです)
  4. 「10秒間ボールに乗せる」 or 「足首を上下に10回動かす」 or 「足全体を軽く左右に10回揺らす」のいずれかを行い場所を変えます
  5. 計5~10分で徐々に場所を変えながら全体的にほぐします
  6. 硬い場所(痛い場所)は入念に行います

 

④ハムストリングスのほぐし

  1. イスに座り、太ももの(図の黄色部分)の下にボールを入れます
  2. 真ん中より少し外側に入れると効果的です
  3. 骨盤を前傾させ(図の矢印)ハムストリングスのストレッチ感があれば10秒キープします
  4. ストレッチ感が感じにくい人は膝を伸ばした状態で行いましょう
  5. 計5~10分で徐々に場所を変えながら全体的にほぐします
  6. 硬い場所(痛い場所)は入念に行います

 

⑤下腿内側のほぐし

  1. 座った姿勢で、ふくらはぎの内側(図の黄色部分)をツボ押し棒 or 手で圧迫する
  2. スネの骨(弁慶の泣き所)のすぐ後側です
  3. 圧迫したまま足首を上下に10回動かし、場所を変えます
  4. 計5~10分で徐々に場所を変えながら全体的にほぐします
  5. 硬い場所(痛い場所)は入念に行います

 

お皿の可動性を改善する

手でお皿を動かす

  1. リラックス」して座ります  ※力が入っているとお皿がうごきません!
  2. 膝は伸ばした状態 or 少し曲げます
  3. ①お皿の上端と下端に指を当て、上下に動かします
  4. ②お皿の外端と内端に指を当て、左右に動かします
  5. ゆっくり各10回×5セット

※お皿の探し方も図をご参照ください

 

傷口周囲をマッサージする

  1. リラックスして座ります
  2. 膝を伸ばす or 少し曲げます
  3. 傷口を優しくつまみます
  4. 「つまんだまま」ゆっくり白矢印の方向に動かします
  5. ゆっくり5〜10分行います
  6. 色々な場所、方向に行いますが、内側方向により多く動かします!


    ※執刀医の先生から許可が出てから行いましょう!
     術後早期に力を加えすぎると傷から出血することがあるので注意しましょう

 

太ももに力を入れてお皿を動かす

  1. 座った姿勢で、ふくらはぎの内側(図の黄色部分)をツボ押し棒 or 手で圧迫する
  2. スネの骨(弁慶の泣き所)のすぐ後側です
  3. 圧迫したまま足首を上下に10回動かし、場所を変えます
  4. 計5~10分で徐々に場所を変えながら全体的にほぐします
  5. 硬い場所(痛い場所)は入念に行います。

あきと

手でマッサージした後は、自分の筋肉の力でお皿を動かします!
上手く筋肉でお皿が動かせるようになると日常生活中でもお皿の動きが改善していきます!

膝の曲げ伸ばしを行う

あおい
やっと膝の曲げ伸ばしエクササイズですね!

あきと
環境を整えてから曲げ伸ばしをすると、とても効果が高まるんです!
捻れを整え、お皿を動かしたら準備OKですね!

膝を伸ばす

  1. 座った姿勢で、リラックスします
  2. ゆっくりと膝を伸ばしていき、力を抜きます
  3. 痛み、怖さがない人は、ストレッチ感が出るまで手で膝を伸ばすように押し込みます
  4. 伸ばした状態で10秒キープします
  5. 休みながら5分ほど繰り返します

※痛みが出ないように行いましょう!

 

膝を曲げる

  1. 座った姿勢で、リラックスします
  2. ゆっくりと膝を曲げていき、力を抜きます
  3. 痛み、怖さがない人は、ストレッチ感が出るまで手で膝を曲げるように押し込みます
  4. 曲げた状態で10秒キープします
  5. 休みながら5分ほど繰り返します

※痛みが出ないように行いましょう!

 

ポイント!
・術後の可動域制限が強く残ってしまっている方は、10秒ではなく1分キープしましょう!
・術後初期は「動かすことが目的」ですが、2ヶ月以上経過して強い可動域制限が残っている場合は「軟部組織の伸張性を高めることが目的」になります。
・軟部組織の伸張性を高めるためには、1分以上の継続したストレッチが効果的です。

膝の筋トレ

大腿四頭筋(太もも前)の筋トレ

内側広筋のセッティング

  1. お皿の骨が点状に向くように足をまっすぐ伸ばします
  2. 膝を伸ばすように(膝裏のタオルをつぶすように)太ももに力を入れます
  3. お皿をまっすぐ引きつけるように意識します
  4. 痛みが無ければ10%〜100%まで段階的に力入れ方を強くしていきます
  5. 力を入れた状態で3秒キープ×30回行います。
  6. ★術後の方はたくさんやりましょう!(100回を1セットとして、1日に3〜10セット目安)

※痛みが出ないように行いましょう!

 

ハムストリングス(太もも後)の筋トレ

ヒップリフト

注意!
ST(G)法(膝裏の腱を移植する方法)で手術を行った方は手術直後にヒップリフトは行えません
・執刀医の先生の許可が出てから開始しましょう!
  1. 仰向けで寝て膝を90°曲げます
  2. 足の裏全体で地面を真下方向に軽く押します
  3. お腹をへこませます
  4. お尻の穴をしめます
  5. お尻をあげます
  6. 一般の方:肩から膝まで一直線になる高さまであげます

 アスリート:最大限あげたところからさらに1cm高くあげます

7. 3秒キープ×10回×3セット行います

※痛みが出ないように行いましょう!

 

患部外の筋トレ

術後初期の段階では、優先順位的に「膝のリハビリ」>「患部外の筋トレ」です。

しかし、膝のリハビリを終えて、プラスαの時間があるのであれば患部外の筋トレも絶対にやった方が良いです!

なぜならば、以下のような効果が期待できるのです!

 

患部外筋トレの効果 (現時点)

  • 日常生活での膝への負担を減らす → 腫れ改善に効果的
  • 間接的に膝の機能に良い影響 → 可動域、力の入りやすさup

 

患部外筋トレの効果 (将来的)

  • 今のうちから体幹や股関節、足首の安定性up → 動作の安定性up → 膝ACL再断裂リスクdown・膝に不具合が生じるリスクdown

あきと
ACL再建のリハビリをたくさん行ったトレーナーさんは痛いほどわかると思いますが、
動作練習をスタートした段階で患部外が弱いと、膝周りの不具合がとても生じやすいんです!
リハビリあるある
動作練習をスタートしました。
でも動作が安定しないので、原因を評価すると体幹のぐらつきが確認できました。
じゃあ体幹のぐらつきを安定させるトレーニングを行って、上手くなったら動作練習を再開しましょう。
このような事例はとても多くあるんです。
なので、はじめからそれを想定して筋トレしておくといいですよね!
以下に具体的な筋トレを紹介します!

体幹の筋トレ

ご存じの方も多いかと思いますが、体幹はめちゃくちゃ大切です!

骨盤や背骨を安定させる目的で体幹エクササイズを行いますが、ただ腹筋するだけではダメなんです 😥 

ポイントは「腹圧」です。

やり方を解説していきますね!

あきと
腹筋が強くて割れている ≠ 体幹が安定している なんです。
ただ腹筋をすれば良いわけではないので、注意が必要です!

ドローイン(腹圧) Level 1

  1. 仰向けで寝て膝を90°曲げます
  2. ゆっくり息を吐きます
  3. 息を吐くのと同時にお腹をへこまします
  4. 一緒にお尻の穴をしめます
  5. 息を吐ききったらリラックスして息を吸い、1〜4を繰り返します
  6. ゆっくり20回行います

※ここではとにかく「腹直筋<<腹横筋・腹斜筋」を意識しましょう!
 今まで腹筋を頑張ってきた腹直筋自慢の選手ほど腹横筋・腹斜筋の収縮が入らないことがありますので根気よく続けましょう
 コツをつかんだらすぐにできるようになると思います!

 

ドローイン(腹圧) Level 2

途中までLevel1と同じです。

息を吐ききったら、お腹をへこます、お尻しめるをキープしたまま息を吸いましょう!」

あきと
スポーツ中は必ず呼吸しますよね。
いつでも腹圧をキープする練習の第一歩です!
  1. 仰向けで寝て膝を90°曲げます
  2. ゆっくり息を吐きます
  3. 息を吐くのと同時にお腹をへこまします
  4. 一緒にお尻の穴をしめます
  5. 息を吐ききったらお腹をへこます、お尻しめるをキープしたまま息を吸います
  6. ゆっくり20回行います

※ここではとにかく息を吸っても腹横筋・腹斜筋の収縮をキープする意識をしましょう!

 

ドローイン(腹圧) Level 3 デッドバグ

Level2の「呼吸をしても収縮がキープできる」状態から手足を動かしていきます!

あきと
多くの種目では手足を動かしますよね。
運動中に腹圧をキープする練習です!
  1. 仰向けで寝て膝・股関節を90°曲げ、手もまっすぐ上げます
  2. 呼吸は続けながら、お腹をへこませ、お尻をしめ、Level2の状態を作ります
  3. お腹をへこます、お尻しめる」をキープしたまま左手と右足を伸ばします
  4. 左右各10回行います

※ここではとにかく手足を動かしても腹横筋・腹斜筋の収縮をキープする意識をしましょう!
 さらに、腰の生理的前弯を維持します。(丸まらない、反りすぎない)
 生理的前弯が失われると、腰椎を安定させる多裂筋の機能が悪くなり、腰痛や腰椎の不安定性の原因となります 😥 

あおい
デッドバグはdead bug=虫の死骸という意味なんです!
調べる時は、dead bug exerciseと調べないと怖い画像が山ほどでてきます 😯 

体幹の筋トレにはLevel4以上のエクササイズもたくさんありますが、まずこの1〜3をマスターし、

すべてのエクササイズ中に腹圧を高めておくということを目指しましょう!

ものすごく大切です。

上に出てきたヒップリフトもそうですし、下に出てくる殿筋のエクササイズもふくらはぎのエクササイズでも同様です!

 

股関節の筋肉(殿筋など)の筋トレ

股関節の筋肉は、骨盤と大腿骨をつなぎ、股関節を安定させる役割があります。

股関節の筋肉が弱いと、大腿骨がブレる=膝がブレることになるので強化が必要です!

そして、股関節の筋肉にもインナーマッスル的な存在の筋肉(腸腰筋、深層外旋六筋)がありますので、それも紹介してきます!

 

腸腰筋の筋トレ : デッドバグ Cross body iso ★インナーマッスル

体幹の筋トレで記載したデッドバグのレベルアップバージョンです!

  1. 仰向けで寝て膝を90°曲げます
  2. ドローインを行います
  3. 骨盤・背骨は固定したままおこないます
  4. ゆっくりと左手で右膝を押し、右膝も左手を押し返します
  5. 押した状態を3秒キープし、10回×3セットを左右行います
  6. 押した状態でもドローインを続けます! 腹直筋の収縮はNGです!
    ※おへそ部分が盛りあがったら腹直筋有意の収縮になっています

※とにかく腹横筋・腹斜筋の収縮をキープする意識をしましょう!

 

深層外旋六筋の筋トレ : クラムシェル ★インナーマッスル

  1. 横向きで寝て膝を90°曲げます
  2. 背骨はまっすぐにし、その背骨のラインに踵が来るようにします
  3. ドローインします
  4. 骨盤・背骨は固定したまま
  5. 膝を最大限開きます
  6. ゆっくり3秒キープ×10×3セット行います

 


※膝を開くことだけ意識すると、骨盤ごと開いてしまうことも多いです。
 おへそが上を向かないように、真横に向けたままで行いましょう!

 

中殿筋の筋トレ : ヒップアブダクション(外転)

  1. 横向きでまっすぐ寝ます
  2. ドローインします
  3. 骨盤・背骨は固定したまま
  4. 足を真横に最大限開きます 
  5. ゆっくり3秒キープ×10×3セット行います

※上手くできない代償動作(身体が開いて足が前から上がる)がでやすいエクササイズです
 少し「身体はうつ伏せぎみ」「足は後ぎみに上げる」意識をするよ上手く行いやすいです!

※ドローインはとにかくキープです!

 

大殿筋の筋トレ : ヒップエクステンション(伸展)

  1. うつぶせで寝ます
  2. ドローインします
  3. 骨盤・背骨は固定して膝はリラックスします
  4. 足をまっすぐ最大限上げます
  5. ゆっくり3秒キープ×3セット×左右行います

※上げる足の膝を曲げると、より大殿筋を鍛えることができます
 足が外に開きやすいので「まっすぐ」上げましょう

※強度が低いと感じる時は、最大限の3秒キープ後も地面に足をつけず、そのまま連続して10回行ってみましょう!

 

内転筋の筋トレ : ヒップアダクション(内転) ボールつぶし

  1. 仰向けで寝て膝を90°曲げます
  2. ドローインします
  3. 膝〜太ももの間に入れたボールを最大限つぶします
  4. ゆっくり3秒キープ×10×3セットおこないます

 

※内転筋はとても大きな筋肉で、意識しないとすぐに痩せてしまします
 ドローインと併用して効果的に刺激を入れましょう!

 

 

ふくらはぎの筋トレ

歩く時など、足首がぐらつくと膝もぐらつきます。

ふくらはぎの筋肉も鍛えておきましょう!

下腿三頭筋(腓腹筋)の筋トレ : カーフレイズ

※体重がかかるエクササイズです!
 執刀医の先生の許可が出てから行いましょう!

  1. 肩幅、つま先まっすぐ前、膝を伸ばして立ちます
  2. 頭のてっぺんが天井から糸でつるされているイメージです
  3. ドローインします
  4. 足の趾はリラックスして、母趾球(親指の付け根)に体重をかけます
  5. 踵を最大限上げます
  6. ゆっくり3秒キープ×10×3セット行います


※悪い例のように、お腹の力が抜け、骨盤が前に動いてしまう状態は良くないです。
 まっすぐの姿勢のままカーフレイズできるように今のうちから練習しましょう!

 

 

まとめ

合計22種目のメニューになってしましました。

1つ5分だとしても、約2時間かかってしまいます 😯 

時間がない方は、膝のメニューだけでもOKです。

選手でリハビリの時間が取れる方は全部毎日行ってみましょう!

術後初期のリハビリの取り組みで今後のリハビリがスムーズに進むかどうか決まってきますので、無理をしすぎず一緒に頑張りましょう!

 

あきと
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