肘内側側副靱帯(MCL)損傷とリハビリテーション

今回は肘内側側副靱帯(MCL)損傷をしてしまったときの対処法について書いていきます。

肘MCL損傷は、野球選手ラグビー選手に多く、重症になると手術療法が適応される厄介なケガなんです。

大谷翔平選手が2018年に行ったトミー・ジョン手術も、この肘内側側副靱帯を再建する手術です。

今回はそんな肘MCL損傷について解説していきたいと思います!

 

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肘内側側副靱帯(MCL)損傷とは?

肘の内側にある内側側副靭帯(MCL)の損傷をさします(図1)。

 

肘内側側副靱帯 肘MCL
図1:肘内側側副靱帯の構成イメージ図。肘内側側副靱帯損傷では、基本的に前斜走繊維の損傷であり、肘が90°以上曲がっていると前斜走繊維の前方部分、90°より伸びていると前斜走繊維の後方部分が損傷しやすいと言われています。

 

肘の外反(手が外側に持っていかれる)」という動きによって、肘MCLが伸ばされ、損傷が生じます。

柔道やラグビー体操競技のように一回の衝撃で損傷してしまう「急性外傷」野球のピッチャーや槍投げ選手のように繰り返しの投球(投擲)動作で靭帯が損傷する「慢性障害」の二種類の損傷パターンがあります。

靭帯損傷が重度の場合には、肘関節の緩みが残ってしまうため、その場合は手術適応となる可能性があります。

あきと
とても大変なケガなので、丁寧なリハビリが重要になります。

肘MCL損傷を起こしやすいシーン

ラグビーのタックルや、柔道の寝技などで手が絡まったり外側に持っていかれたりした時に損傷がおこります。 

体操競技などでは手を床についた瞬間、肘関節の脱臼に併発して内側側副靭帯が損傷することもあります。 

また、野球では投球動作を繰り返すことで肘MCLの微細な損傷が蓄積し、痛みが生じることも多いです。

あきと
転倒をした場合、「バキッ」など音が聞こえた時は骨折を伴う場合もあるので必ず病院を受診しましょう!

 

 

肘MCL損傷後のよくある症状

肘を伸ばしきった時曲げきった時に肘の内側に痛みが生じます。

肘の可動域制限(伸ばしきれない、曲げきれない)がある場合も多いです。

また、肘の外反(手を外側に開く動き)で肘の内側に痛みが生じます。 

肘の内側に付着している筋肉の損傷も合併している場合は、物を持つときなど肘に力が入ると痛みが誘発されます。

あきと
肘を曲げ伸ばしして、肘の内側が痛い場合は要注意です!

病院で行う検査

MRI検査エコー検査によって、肘MCLの損傷の有無を確認します。 

エコー検査では肘MCLの緩みを確認することも可能です。

また、レントゲン検査によって骨折などの骨の損傷の有無を確認します。 

一般的には、問診(怪我した状況の確認など)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(肘外反ストレステスト、moving valgus stress test)などを行います。

             

肘MCL損傷と診断されたら

基本的には保存療法を行います。

一方で、損傷が重度で関節の緩みが強い場合には靭帯の再建手術を行います。

保存療法の場合も、手術療法の場合も、

スポーツ復帰する時に肘MCLを「守ることができる肘の筋力」、「肘のみに負担がかからない動作の習得」が必要不可欠です。

そのために、肘MCL損傷と診断されたら段階的にリハビリを開始しましょう!

以下に、保存療法と手術療法のリハビリテーションの流れを書いていきます。

肘MCL損傷のリハビリテーション

基本的にはこの保存療法でリハビリを行い、復帰を目指します!

保存療法のリハビリテーション

中等度の損傷をイメージしてリハビリの流れを記載しています。

期間は目安ですので、自分に合った進め方をしましょう!

リハビリを進めるためのチェックポイント!
✅ 腫れ・痛みが悪化していないこと!
リハビリの負荷を上げた時に、「リハビリ中」「リハビリ後」「当日夜」「翌日朝」の悪化がなければOKです!
✅ 肘の曲げ伸ばしがスムーズで左右差がない
✅ 肘の内側の筋肉を鍛える
✅ 肩甲骨・体幹が安定している
✅ ケガをした動作が安定しいて良いフォームである
炎症期(受傷後3日ほど)
RICE処置

あきと
RICE処置はとても大切です!
1日に数回繰り返しましょう。
肘の内側には尺骨神経が走行していますので、アイシング・圧迫中に痺れが出たらすぐに中止しましょう!
リハビリ前期(3日〜2週)
・肘の屈曲・伸展可動域を改善する!(←腫れの改善・周囲の筋肉のマッサージ)
・痛みのない範囲で肘内側の筋トレ!(←マイルドな浅指屈筋、尺側手根屈筋のエクササイズ)
・肩甲骨・体幹の筋トレ!(←体幹と肩甲骨周囲筋の筋トレ)

あきと
肘の屈曲伸展可動域の左右差を無くすことです!
リハビリ中期(2週〜4週)
・肘内側の筋トレをレベルアップ!(←浅指屈筋、重りを持って尺側手根屈筋のエクササイズ)
・肩甲骨・体幹の筋トレレベルアップ!(←体幹と肩甲骨周囲筋の筋トレ)
・投球・投擲競技の場合はシャドーで投球フォームのチェック!

あきと
★肘曲げ伸ばしOK
★肘に力を入れても痛くない
そうなったらフォームチェックを開始しましょう!
リハビリ後期(3週〜6週)
・体重をかけたエクササイズをする!(←四つ這いや腕立て伏せなど)
・段階的に痛めた動作をスタート!(←投球・投擲・軽いタックル練習など)

あきと
肘に負担がかかっていないかフォームは要チェックです!
復帰期(4〜8週)
・1〜2週間かけて段階的に練習に参加しましょう!

あきと
練習後にアイシング肘の曲げ伸ばしチェックを必ず行いましょう!
肘が伸びにくい場合は、筋肉をマッサージしてしっかり伸ばしてから次の練習に取り組みましょう!

手術療法のリハビリテーション

痛みや肘の可動域制限が残りやすいので、術後のリハビリは慎重に進めなければなりません。

基本的なリハビリテーションの流れは「保存療法」と同じですが、やエクササイズを進める時期は必ず執刀医の先生と相談して決めて下さい!

おおまかなスケジュールを記載していきますが、あくまで執刀医の先生のスケジュールで進めてください

 

 

術後 〜1ヶ月
・日常生活では、肘は固定する
・リハビリのタイミングのみ固定を外し、マイルドに肘の曲げ伸ばし、周囲筋・傷口のマッサージを行う
・炎症がある場合は積極的にアイシングを行う
術後1ヶ月〜
・固定解除
・肘の曲げ伸ばしエクササイズを積極的に
・肘周囲、肩、肩甲骨、体幹などの筋トレをスタート
術後2ヶ月〜
・肘周囲の筋トレのレベルアップ!
術後3ヶ月〜
・手を床についたエクササイズスタート(四つ這い、腕立てなど)
・徐々にウエイトトレーニングもスタート
術後4ヶ月〜
・ケガをした動作の練習をスタート
術後5ヶ月〜10ヶ月
・徐々に運動強度をアップ
その後は徐々に運動量を上げていき、8〜12ヶ月で復帰を目指します!

まとめ

ここまで、肘MCL損傷後の方針やリハビリテーションについて書いてきました。

肘MCL損傷は痛みが残りやすいケガですので、基本をしっかりおさえながらリハビリをしていきましょう!

あきと
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参考文献

 

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