上腕二頭筋長頭腱炎とリハビリテーション

今回は上腕二頭筋長頭腱炎(tendon of the long head of the biceps brachii:LHB腱炎)になってしまったときの対処法について書いていきます。

投球動作などで多く発生する上腕二頭筋長頭腱炎は、他の筋肉などの損傷と合併して起こりやすく、放置すると治りにくくなってしまうケガです。

一方で、しっかりとリハビリを行い、肩の正しい使い方を獲得できれば大きな問題にはなりません。

今回はそんな上腕二頭筋長頭腱炎について解説していきたいと思います!

 

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上腕二頭筋長頭腱炎とは?

上腕二頭筋長頭は、力こぶの筋肉である上腕二頭筋の一部であり、長頭腱は肩の前面を通っています(図1)。

上腕二頭筋長頭腱炎は、その長頭腱が炎症を起こしている状態をさします。

図1の右図を見ていただくとわかるように、上腕二頭筋長頭腱は、肩のインナーマッスルである肩甲下筋や棘上筋の間を通ります。また、その起始部は上方関節唇にも付着するため、上腕二頭筋長頭腱炎は、肩甲下筋損傷、棘上筋損傷、上方関節唇損傷(SLAP損傷)などと合併して生じることが多いと言われています[]。

上腕二頭筋長頭腱 上腕二頭筋
図1:上腕二頭筋長頭腱のイメージ図。腱板筋である肩甲下筋と棘上筋に挟まれた位置を通過しています。上腕骨大結節と小結節の間の結節間溝を通っています。

あきと
上腕二頭筋が単独で炎症を起こすというよりも、他の組織の損傷などの影響で肩の使い方が悪くなり、結果的に上腕二頭筋長頭が炎症を起こしてしまうというイメージですね。

 

 

  ※マメ知識

このブログでは、「上腕二頭筋長頭腱」と記載していますが、上腕二頭筋長頭腱や上腕二頭筋長頭腱障害とも呼びます。

そして、正しくは「上腕二頭筋長頭腱」なんです。

最近では、腱炎(tendinitis)ではなく、腱症(tedinosis)と呼ばれていますので、よかったら覚えてみてください。

ちなみに、腱症は腱自体の炎症などの問題腱障害は腱周囲の組織の問題も含めた総称になっています。

 

上腕二頭筋長頭腱炎が起こりやすいシーン

野球など、オーバーヘッド動作(※)の繰り返しが多いスポーツや、上半身のウェイトトレーニングの繰り返しなどによって起こります。

中高年の一般の方では、肩関節周囲炎のように「気がついたら上腕二頭筋長頭腱が炎症を起こし、肩の前側に痛みが出ている」ということもあります。

 

※オーバーヘッド動作とは、打点が頭の上となる動作のことを言います。

 野球やテニス、バレーボールなどが該当しますね。

 また、サッカーでも頭の上に来たボールをキックすることをオーバーヘッドキックと呼んでいます。

 

上腕二頭筋長頭腱炎のよくある症状

・肩の前側が痛い/押すと痛い(図2)
・前からバンザイすると肩の前が痛い
・手を後ろに引くと肩の前が痛い
・重いものを持つと肩の前側が痛い
・ボールを投げるなど、オーバーヘッド動作が痛い
肩を動かしたり、物を持ったりしたときなどに肩の前側に痛みが出るのが特徴です。
上腕二頭筋長頭腱炎
図2:上腕二頭筋長頭腱炎の痛みが出やすい部位のイメージ図。

あきと
炎症が増えるとやっかいですので、早めに病院に行きましょう!

病院で行う検査

基本的に診察やエコーなどで上腕二頭筋長頭腱の炎症の状態を確認します。

症状が強い場合や、他の筋肉の損傷(腱板断裂など)が疑われる場合はMRI検査にて炎症や損傷の有無を確認します。

一般的には、問診(痛みが出た状況の確認など)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(Speedテスト、Yergasonテストなど)などを行います。

 

上腕二頭筋長頭腱炎 上腕二頭筋長頭腱脱臼
図3:上腕二頭筋長頭腱の脱臼のイメージとMRI画像。上腕二頭筋長頭腱は炎症だけでなく普段収まっている結節間溝という部分から脱臼してしまうこともあります。この図は文献2より引用しています。

 

 

上腕二頭筋長頭腱炎と診断されたら

基本的には保存療法でリハビリを行ないます。

 

上腕二頭筋長頭腱炎は「①上腕二頭筋の硬さ」と「②肩の動きの悪さ」によって生じると考えられています。

については、上腕二頭筋は肩甲骨から肘を跨いで前腕の橈骨という骨についていますので、肩甲骨の位置、肘が伸びているか、上腕二頭筋が硬くなっていないかなどが重要になります。

については、肩のインナーマッスルである腱板筋(棘上筋、肩甲下筋、棘下筋、小円筋)がしっかりと使えているかが重要ですね。

 

それでは、肩関節周囲炎のリハビリテーションの流れを説明していきます!

上腕二頭筋長頭腱炎のリハビリテーション

期間は目安ですので、自分に合った進め方をしましょう!

リハビリのポイント
★炎症期
✅ 患部の炎症を抑える
✅ 肩甲骨/肩の関節の位置を良くする
✅ の動きを改善する
✅ 姿勢を良くする
★リハビリ前期
✅ 肩の可動域を改善する
✅ 肩のインナーマッスルを鍛える
★リハビリ中期
✅ 肩に荷重をかけたトレーニング
✅ スポーツ動作の練習開始


★リハビリ後期
✅ スポーツ復帰

炎症期(痛みが強い・腫れている時期 〜約1週間)
・アイシングをする!
・背中・肩甲骨の柔軟性改善!(←背中・胸の前をストレッチ)
・上腕二頭筋・肘の動きの改善!(←上腕二頭筋・前腕の筋肉のマッサージ)
・姿勢を良くする練習!(←胸を張る練習、普段も姿勢を良く)

あきと
炎症が残ってしまうと痛みが長引きます。
安静にしてアイシングを積極的に行いましょう!
リハビリ前期(痛みが落ち着いた時期 約1〜4週間)
・肩周囲の筋肉をマッサージする!(←ボールなどで、肩甲骨周囲・肩周囲のマッサージ)
・痛みのない範囲で肩のストレッチ!(←肩のストレッチ)
・肩のインナーマッスルの筋トレ!(←チューブなどで筋肉を鍛える)

あきと
インナーマッスル(腱板)を鍛えていきましょう!
リハビリ中期(ほぼ症状がなくなる時期 約3~6週間)
・肩に荷重をかけたトレーニング開始!(←よつ這いや腕立て伏せ、ウエイトトレーニングなど)
・スポーツ動作の練習を開始!(←シャドーピンチング、キャッチボールなど)
・インナーマッスルの筋トレは継続!

あきと
スポーツ動作を開始します!
フォームチェックも行い、リハビリを行ったあとは、押した痛み、硬さや腫れが出ていないかチェックしながら行いましょう。
リハビリ後期(症状が消失し、全力で力を入れても問題ない時期 約4〜8週)
・スポーツ復帰!

あきと
念の為、スポーツ復帰後も「押した痛み」と「肩の動きの硬さ」をチェックしておきましょう。

まとめ

ここまで、上腕二頭筋長頭腱炎の方針やリハビリテーションについて書いてきました。

上腕二頭筋長頭腱炎はしっかりリハビリをしないと長引きやすいケガですので、基本をしっかりおさえながらリハビリをしていきましょう!

あきと
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参考文献

[1]上腕二頭筋長頭腱障害 - 上肢のスポーツ外傷・障害 - 講座スポーツ整形外科学2.  池上博泰 編集, 中山書店, 141-145, 2021 

[2]Zappia et al., Long head of the biceps tendon and rotator interval.Musculoskelet Surg. 2013 Aug;97 Suppl 2:S99-108.

 

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