今回は肩QLS症候群(Quadrilateral space syndrome)になってしまったときの対処法について書いていきます。
肩QLS症候群は、オーバーヘッドスポーツの選手に起こりやすい肩後方の痛みや神経症状を訴えるケガです。
不良な投球フォームが原因で発生する場合もあり、休んでいるだけでは改善しないことも多いです。
今回はそんな肩QLS症候群について解説していきたいと思います!
目次
肩QLS症候群とは?
肩QLSとは、肩の後ろ側の上腕三頭筋長頭、大円筋、小円筋で囲まれた四辺形間隙(=QLS)という部分をさします(図1)。
QLSには腋窩神経と後上腕回旋動脈という神経と動脈が通っているため、周囲の筋肉が硬くなりQLSが狭くなると神経支配領域に痛みや知覚障害が出現します。
この、「QLS周囲の筋肉が硬くなる→腋窩神経が圧迫される→肩後方の痛みや知覚障害が出現する」ことを肩QLS症候群と呼びます。
肩QLS症候群が起こりやすいシーン
20-40代の男性に多く、野球などオーバーヘッドスポーツの選手に多く発生します[2]。
また、一般の方の肩関節周囲炎などに付随して起こることもあります。
肩QLS症候群のよくある症状
肩後方〜外側にかけての痛みや同部位のしびれ、肩の脱力などの症状を呈することがあります。
異変を感じたら早めに病院を受診しましょう!
病院で行う検査
基本的には診察で痛みの原因となっている部位のチェックや神経症状の確認を行います。
また、神経症状は首の神経が原因となっている場合もあるため、症状が強い場合はMRI検査で首の状態を確認することもあります。
画像検査の他には、問診(痛みが出た状況の確認など)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(Tinel兆候など)などを行います。
肩QLS症候群と診断されたら
基本的には保存療法で復帰を目指します。
あまりにも神経症状が強い場合は、投薬や注射を行うこともあります。
(詳しくは専門の医師に相談してみてください。)
肩QLS症候群は、「①QLS周囲の硬さ」と「②肩甲骨・体幹の不安定性」、「③不良なフォーム」が原因で発生します。
①は前述したとおり、肩QLS症候群はQLS周囲の上腕三頭筋、小円筋、大円筋が硬くなって神経を圧迫することが原因になるため、周囲の硬さは直接的に症状に影響します。
②は①の原因となります。①の3つの筋肉は肩甲骨と上腕骨に付着しています。そのため、肩甲骨や体幹が不安定だと過剰な負荷がかかってしまうため、肩甲骨や体幹の安定性はとても重要になります。
③も①の原因となります。
1例ですが、右投げで右肩QLS症候群の野球選手の投球フォームをチェックしたとします。
ボールリリース時に踏み込み足である左足に体重が乗らず、手投げになっている場合、リリース後に上肢(上腕骨)が前方に引っ張られる負荷が増大します。
その上肢をつなぎとめるために小円筋や大円筋、上腕三頭筋が過剰に活動し、筋肉の硬さに影響してしまします。
この場合ですと、左股関節に体重をかける練習をすることで症状が改善してくる可能性もあります。
少し細かい説明が入ってしまいましたが、以下に肩QLS症候群のリハビリテーションの流れを説明していきます!
肩QLS症候群のリハビリテーション
期間は目安ですので、自分に合った進め方をしましょう!
✅ 患部の炎症を抑える
✅ 姿勢を良くする ★リハビリ前期
✅ 肩の可動域を改善する
✅ 肩甲骨周囲の筋トレをする
✅ 肩のインナーマッスルを鍛える
★リハビリ中期
✅ スポーツ動作の練習開始
★リハビリ後期
✅ スポーツ復帰
・背中・肩甲骨の柔軟性改善!(←背中・胸の前をストレッチ)
・姿勢を良くする練習!(←胸を張る練習、普段も姿勢を良く)
肩後方を押してしびれる場合などはあまり触れずに安静にしておきましょう!
・肩甲骨に筋トレ!(←肩甲骨を寄せるエクササイズなど)
・肩のインナーマッスルの筋トレ!(←チューブなどで筋肉を鍛える)
肩甲骨の安定性は意識してトレーニングを行っていきましょう!
・スポーツ動作の練習を開始!(←シャドーピンチング、キャッチボールなど)
フォームチェックも行い、リハビリを行ったあとは、押した痛み、硬さが出ていないかチェックしながら行いましょう。
まとめ
ここまで、肩QLS症候群の方針やリハビリテーションについて書いてきました。
肩QLS症候群はしっかりリハビリをしないと長引きやすいケガですので、基本をしっかりおさえながらリハビリをしていきましょう!
「もっとこれが知りたい!」「こんな記事を書いて欲しい!」「ケガのことを相談したい!」
などご要望をお受けしています!
〈お問い合わせ〉からお気軽にご連絡ください!
参考文献