三角骨障害とリハビリテーション

今回は三角骨障害(os trigonum)の対処法について書いていきます。

三角骨障害は、足首の後方に出現する三角骨によって痛みが生じている状態をさします。

つま先を下に向ける動きで痛みが誘発されるため、バレエダンサーやサッカー選手に多いケガです。

今回はそんな三角骨障害についてポイントを解説していきたいと思います!

 

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三角骨障害とは?

三角骨障害とは、足首の中心にある距骨の後突起部分が遊離し炎症や痛みが生じている状態をさします(図1)。

この、遊離した距骨後突起部のことを三角骨と呼んでいます。

距骨後突起が遊離する主な原因は、2つあると考えられています[]。

  1. 成長期の癒合不全:距骨後突起の部分は、成長期に骨が作り上げられる起点(二次骨化中心)になっています。通常であれば距骨本体(一次骨化中心)と癒合して1つの距骨となりますが、癒合不全が起こると距骨後突起が遊離した状態となり三角骨となります。
  2. 距骨後突起の裂離骨折:距骨後突起の形状や、度重なるストレスが原因で裂離骨折が生じ、遊離した三角骨となります。

 

三角骨障害
図1:三角骨障害のイメージ図とレントゲン画像。

 

 

三角骨が存在していても痛みがでなければ問題はありませんが、バレリーナやサッカーのインステップキックなど足首の底屈運動を高頻度で行うと足首後方の負担が増え、炎症が生じやすいと言われています(図2)。

バレエダンサーの30%に三角骨が存在するとも報告されているんです[]。

 

三角骨障害 底屈運動
図2:足首の底屈運動で足首の後方が圧迫されるイメージ図。

 

 

 

あきと
三角骨の近くには長母趾屈筋という親指を曲げる筋肉の腱も通っているため、この腱と擦れて炎症が生じる場合も多くあります(図3)。
長母趾屈筋
図3:長母趾屈筋のイメージ図。ちょうど三角骨の周囲を通過していることが分かります。

三角骨障害を起こしやすいシーン

前述の通り、三角骨障害は足関節底屈(つま先を下に向ける)を多く繰り返すスポーツで多く発生します

つま先立ち(ポアント)の姿勢が多いバレエダンサーや、足関節底屈位でのキック(インステップキック)をよく使用するサッカー選手に多く発生します。

 

 

三角骨障害のよくある症状

・足関節底屈をすると足首の後ろ側が痛い(図4)
・アキレス腱と外くるぶしの間に押した痛みがある(図4)
・つま先立ちが痛い
・足関節底屈位となるスポーツ動作で痛い

足関節の底屈動作で痛みが出るのが特徴的です。

 

三角骨障害 痛みの出方
図4:三角骨障害の足関節底屈での痛みと、圧痛ポイントのイメージ図。

 

病院で行う検査

病院では、レントゲン検査によって三角骨の有無を確認します。

三角骨の形状をより詳細に判断するためにはCT検査が有効です。

また、炎症が三角骨由来のものなのか、周囲の腱由来のものなのかを判断するために、エコー検査MRI検査を行うこともあります(図5)[]。

 

一般的には、問診(痛みの出る状況の確認など)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(足関節底屈テスト、長母趾屈筋の伸長・収縮時痛チェック)などを行います。

 

三角骨障害 画像所見
図5:三角骨障害の画像所見。文献3より引用。A:レントゲン画像、B:CT画像、C:MRI画像

             

三角骨障害と診断されたら

基本的には保存療法で足の動きを改善するリハビリを行います。

三角骨障害と診断されても、足首の動きの悪さ長母趾屈筋腱の硬さが痛みの原因であることが多いため、まずはその原因を取り除けるようにリハビリを試してみましょう。

 

一方で、三角骨が大きく、明らかに足関節底屈で三角骨が痛みの原因となっている場合保存療法でも痛みが引かない場合などは、手術療法で三角骨を摘出することも行います。

 

あきと
保存療法、手術療法の判断は難しいため、専門医の先生に痛みの原因をしっかりとチェックしてもらいましょう!

 

ここからはリハビリについて説明していきますね。

三角骨障害のリハビリテーション

リハビリのポイントは、「患部の炎症・柔軟性の改善」、「足首・足部の安定性の改善」、「足関節の不安定性に影響する体幹の安定性の改善」です!

 

三角骨障害になってしまう選手は、足首・体幹などが不安定バランスを取るために足の趾の筋肉の負担↑長母趾屈筋などの足趾の筋肉が固くなる足首の動きが悪くなり足関節後方で骨同士が衝突する足関節後方の炎症が生じる となる場合が多いです。

そのため、この悪い流れを断ち切るための、炎症のコントロール、足首の動きの改善、足首・周囲の固定力upが必要なんです!

 

実際のリハビリメニューは↓のページを御覧ください。

 

 

リハビリを進めるためのチェックポイント!
・腫れ・痛みが悪化していないこと!
 リハビリの負荷を上げた時に、「リハビリ中」「リハビリ後」「翌日朝」の悪化がなければOKです!

※リハビリの期間は目安ですので、自分に合った進め方をしましょう!

 

炎症期(足首の底屈、つま先立ちが痛い時期 ~1週間)
・RICE処置
・ふくらはぎ・足首周囲・足の裏のほぐし!(←足首の動き改善、足趾の筋肉の硬さを改善)
・荷重なしで足首・足趾の筋トレ!(←座ってカーフレイズ、チューブエクササイズ、ショートフットエクササイズなど)
・体幹とお尻の筋肉を鍛える!(←体幹と殿筋の筋トレ)

あきと
まずはアイシングで炎症を抑えて、足首に動きを改善していきます!
リハビリ前期(つま先立ち痛くない 1週間〜2週間)
・ふくらはぎ・足首周囲・足の裏のほぐし!(←継続)
・体重をかけた足首周囲の筋トレ!(←立ってカーフレイズなど)
・その他の体重をかけた筋トレをする!(←スクワット、片脚スクワット、ランジなど)
・体幹とお尻の筋肉を鍛える!(←継続)

あきと
荷重をかけたトレーニングでは、必要以上に足の趾に力が入らないように注意しましょう!
リハビリ中期(ジャンプ、ケンケンが痛くない 2〜4週間)
・ホップなどのジャンプエクササイズを開始する!(←ジャンプ着地の衝撃でも足首を固定する)
・ジョギングを開始する!
・少しずつ直線のランニングスピードをアップする!
ジョギングを開始する前に下の①②を達成できるようにしましょう!
①下腿前傾角度左右差無し
②片足カーフレイズ30回

あきと
体幹が安定している」「足首が安定している」ことが重要です!
足の趾の筋肉に余分な負担をかけないように、大きい筋肉に頑張ってもらいましょう!
リハビリ後期(ランニングしても痛くない・腫れない 3週〜6週)
・スプリント、ステップワーク、ジャンプの練習をする!(←アジリティトレーニングなど)
・リアクション、対人動作の練習とする!(←リアクションドリル、対人練習など)

あきと
動いた後の痛み・足首の動きは要チェックです!
復帰期(強度を上げても痛くない・腫れない 4〜8週)
・1〜2週間かけて段階的に練習に参加しましょう!

あきと
「足関節底屈での痛み」と、「足首の柔軟性」は要注意です!
再発しないように復帰後のチェックも行いましょう!

まとめ

ここまで、三角骨障害の方針やリハビリテーションについて書いてきました。

三角骨障害は再発もしやすいケガですので、基本をしっかりおさえながらリハビリをしていきましょう!

あきと
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参考文献

[1] 有痛性三角骨 - 下肢のスポーツ外傷・障害 - 講座スポーツ整形外科学3.  近藤英司 編集, 中山書店, 317-320, 2021 

[2]Peace et al., MRI features of posterior ankle impingement syndrome in ballet dancers: a review of 25 cases. Clin Radiol. 2004 Nov;59(11):1025-33.

[3]Nikolopoulos et al., Endoscopic Treatment of Posterior Ankle Impingement Secondary to Os Trigonum in Recreational Athletes. Foot Ankle Orthop. 2020 Sep 23;5(3)

 

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