足舟状骨疲労骨折とリハビリテーション

今回は足舟状骨疲労骨折(navicular stress fracture)の対処法について書いていきます。

舟状骨疲労骨折は難治性の骨折に分類され、予後が悪いことで知られています。

しっかりと治療をしないと問題が長引くことがあるため、悩ましいケガなんです。

今回はそんな舟状骨疲労骨折についてポイントを解説していきたいと思います!

 

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舟状骨疲労骨折とは?

足の舟状骨疲労骨折とは、足の内側にある舟状骨(図1)という骨が疲労骨折を起こしている状態をさします。

陸上長距離選手、サッカー選手、バスケットボール選手などの走ることが多い選手に多いケガです。

舟状骨疲労骨折は、非常に治りにくい骨折のため、手術療法の適応になることも多くあります。

 

舟状骨
図1:舟状骨は足の甲の内側にあります。

 

あきと
”疲労骨折”とは、繰り返される負担によって、徐々に骨に亀裂が入り骨折してしまうものを言います。

 

 

骨折は以下の4タイプに分類されています[]。

(タイプ分類の画像はすべてNavicular Stress Fracture Outcomes in Athletes: Analysis of 62 Injuries. Amol SaxenJ Foot Ankle Surg. 2017 Sep-Oct;56(5):943-948.から引用しています。)

 

タイプ分類 画像所見 説明
タイプ 0.5

CTでの骨折所見なし

MRIでのみ高信号領域が確認される

タイプ 1 表面の皮質の骨折(冠状断)
タイプ 2 骨折が表面から内部まで及ぶ(冠状断)
タイプ 3 骨折が表面から内側/外側の表面まで及ぶ(冠状断)

あおい
タイプ0.5って、珍しい分類ですね!

あきと
もともとタイプ1~3で発表されていましたが、論文の読者の指摘があって
タイプ0.5が後から追加されたみたいです。

 

 

舟状骨疲労骨折は、早期発見・早期治療が大切ですが、舟状骨疲労骨折の初期の段階では、レントゲン検査のみではなかなか確認できません

レントゲン検査のみだと66%も見落とす可能性があると報告されているんです[]。

 

舟状骨疲労骨折を起こしやすいシーン

舟状骨疲労骨折は陸上競技選手に発生が多く、その他にもサッカー選手やバスケットボール選手など多く走るスポーツで起こります[]。

 

舟状骨疲労骨折のよくある症状

・舟状骨を押すと痛い(図2)
・走ると痛い
・つま先立ちが痛い
・歩くと痛い

舟状骨を押したときの痛み、走った時の足の甲の内側部分の痛み、また朝起きた時の歩く痛みなどが特徴的です。

 

舟状骨疲労骨折 圧痛部位
図2:舟状骨疲労骨折の圧痛部位。足の甲の内側を押すと痛みが出やすいです。

 

 

病院で行う検査

初期の舟状骨疲労骨折はレントゲンに写ることはほとんどありません[]。

そのため、基本的にはMRI検査CT検査行います。

骨の中の炎症を詳しくみる場合はMRIを、骨折線を詳しくみる場合はCT検査を重要視します。

一般的には、問診(痛みの出る状況の確認など)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(荷重時痛の確認)などを行います。

 

舟状骨疲労骨折と診断されたら

保存療法手術療法を選択して行きます。

海外の論文をまとめた研究(システマティックレビュー)では、手術療法のほうが予後が良いと報告されており、

タイプ0.5タイプ1の場合に約6週間のギプス固定と免荷を行い、タイプ2タイプ3では手術療法が推奨されています[]。

 

あきと
あくまでも海外の研究での話ですので、受診した専門医の先生と相談して治療方針を決めていきましょう!

 

骨折のタイプによっても判断が変わる可能性があるため、基本的にCT撮影は行ったほうが良さそうですね。

 

ここからリハビリについて説明していきますね。

舟状骨疲労骨折のリハビリテーション

リハビリのポイントは、「骨の癒合」、「アーチ機能の改善」、「足首・周囲の固定力up」です!

舟状骨疲労骨折は、足首や足部が不安定な選手に多いです。

スポーツ中に足が接地してもグラつかない安定性を身につけましょう

※保存療法・手術療法のどちらにも対応できるように、今回は期間ではなく症状ベースでリハビリの流れを解説します!

 

具体的なリハビリメニューは↓のページに載せています。

 

 

リハビリを進めるためのチェックポイント!
・圧痛(押した痛み)が悪化していないこと!
 リハビリの負荷を上げた時に、「リハビリ中」「リハビリ後」「翌日朝」の圧痛の悪化がなければOKです!
炎症期(免荷期間:足をついてはいけない期間 or 歩いて痛みがある期間)
・RICE処置
・足首周囲のほぐし!(←足部周囲の筋肉のマッサージ、足関節のスムーズな動きの獲得、アーチ形状の改善)
・荷重なしで足首周囲・足趾の筋トレ!(←チューブエクササイズ、タオルギャザーなど)
・体幹とお尻の筋肉を鍛える!(←体幹と殿筋の筋トレ)

あきと
疲労骨折の治療には、LIPUS(超音波骨折治療法)や体外衝撃波治療が有効とされています。
その他、栄養面も気をつけたほうが良いですので、良かったらJones骨折のページを参考にしてみてください。
リハビリ前期(体重をかける許可が出た時期、ランニングはまだNGな時期)
・足首周囲のほぐし!(←継続)
・体重をかけたスクワット系の筋トレ!(←足の裏全体を地面についた自重の筋トレから開始します)
・体重をかけたカーフレイズ系の筋トレ!(←カーフレイズなど)
・体幹とお尻の筋肉を鍛える!(←体幹と殿筋の筋トレ)

あきと
必ず担当の先生から体重をかける許可をもらってから開始しましょう!
踵を浮かせるカーフレイズは負荷が高いです。
足裏全体がついているスクワット系のトレーニングから開始しましょう!
リハビリ中期(ランニング許可が出た時期)
・ホップなどのジャンプエクササイズを開始する!(←ジャンプ着地の衝撃でも足首を固定する)
・ジョギングを開始する!
・少しずつ直線のランニングスピードをアップする!
ジョギングを開始する前に下の①②を達成できるようにしましょう!
①片足カーフレイズ30回
②ケンケンの着地で踵が安定している(つま先が接地している時に、踵と床面の距離がキープできている)

あきと
ケンケンでも安定できれば、ジョギングで痛みがでてくるリスクは低いと思います!
リハビリ後期(ステップワーク、ジャンプ、リアクション、対人運動の許可が出た時期)
・スプリント、ステップワーク、ジャンプの練習をする!(←アジリティトレーニングなど)
・リアクション、対人動作の練習とする!(←リアクションドリル、対人練習など)

あきと
動いた後の圧痛は要チェックです!
復帰期(復帰許可が出た時期)
・1〜2週間かけて段階的に練習に参加しましょう!

あきと
とにかく圧痛のチェックは大切です!
少しでも違和感や痛みがある場合は無理せずしっかりと治しましょう!
舟状骨疲労骨折とインソール
インソールも非常に重要です!
足のアーチのブレを防ぐために内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチにフィットする物を用いましょう。

まとめ

ここまで、舟状骨疲労骨折の方針やリハビリテーションについて書いてきました。

舟状骨疲労骨折は難治性の骨折でリハビリをしっかり行わないと再発してしまうこともあります。

基本をしっかりおさえながらリハビリをしていきましょう!

あきと
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参考文献

[1]Navicular Stress Fracture Outcomes in Athletes: Analysis of 62 Injuries. Amol SaxenJ Foot Ankle Surg. 2017 Sep-Oct;56(5):943-948.

[2]Stress fracture of the navicular bone. Paul F G de Clercq et al., Acta Orthop Belg. 2008 Dec;74(6):725-34.

[3]Navicular stress fractures. Morgan H Jones et al., Clin Sports Med. 2006 Jan;25(1):151-8

[4]Return to sport following navicular stress fracture: a systematic review and meta-analysis of three hundred and fifteen fractures. Ahmed Khalil Attia et al.,Int Orthop. 2021 Oct;45(10):2699-2710.

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