踵部脂肪体炎とリハビリテーション

今回は踵部脂肪体炎(heel fat pad syndrome)の対処法について書いていきます。

踵のクッションである踵部脂肪体は、強い衝撃を受けると炎症を起こしてしまいます。

頻度は高くないですが、体重をかけるたびに強い痛みがでるため、困ることが多いと思います。

今回はそんな踵部脂肪体炎についてポイントを解説していきたいと思います!

 

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踵部脂肪体炎とは?

踵の部分にある、クッションの役割をしている踵部脂肪体(図1)が炎症を起こしていることをさします。

踵部脂肪体は、衝撃を吸収するためのクッションの役割をしています。

ジャンプ着地など踵に思いっきり荷重をしてしまったときに起こる場合と、後方重心(踵体重)の動作を繰り返すことによって踵に負荷が溜まって炎症が起こる場合があります[]。

 

踵部脂肪体
図1:踵部脂肪体の場所のイメージ。

 

また、足底腱膜炎の患者さんは、踵部脂肪体のクッションがが薄くなっていると報告もされています[]。

超音波で見ると、踵部脂肪体の分厚さがわかりやすいですね(図2、文献2)。

 

踵部脂肪体 超音波 脂肪体の厚み
図2:超音波検査による踵部脂肪体の厚みの測定。文献2より引用しています。

 

あきと
足底腱膜炎と症状が似ている部分もありますが、
踵部脂肪体炎は、足裏の踵部分の打撲といったイメージです。

踵部脂肪体炎を起こしやすいシーン

ジャンプ着地などでバランスを崩し、踵部分に大きな衝撃が加わることで発生します。

 

また、踵重心での動作を繰り返すことで慢性的な痛みが起こることもあります。

サッカーのキックの軸足が、踵重心になる 衝撃吸収がうまくできないことで起こることがあります(図3)。

 

踵部脂肪体炎 キックフォーム
図3:踵に衝撃が集中するキックフォームのイメージ図。ピッチが硬い場合はさらに踵への衝撃が増します。

踵部脂肪体炎のよくある症状

・踵の裏を押すと痛い(図4)
・踵体重になると痛い
・踵周囲に内出血がある

踵部分の押した痛みと、体重をかけた時の痛みが特徴的です。

 

踵部脂肪体炎 圧痛 押した痛み
図4:踵部脂肪体炎の圧痛部位イメージ

あきと
逆に、踵に体重をかけなければ、ジャンプしても走っても痛くない場合が多いです。

病院で行う検査

基本的には診察で踵部脂肪体の状態を確認します。

また、エコー検査MRI検査では脂肪体部分の炎症を確認することができます。

痛みが強すぎる場合は、レントゲン検査CT検査踵骨の骨折がないかを確認することがあります。

 

一般的には、問診(痛みの出る状況の確認など)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(圧痛、荷重時痛のチェック)などを行います。

             

踵部脂肪体炎と診断されたら

基本的には保存療法となります。

アクシデントでぶつけてしまった場合は、踵部脂肪体の炎症のコントロールがメインとなります。

踵重心の動作不良によって炎症が起きてしまった場合は、炎症のコントロール動作の改善が必要になります。

 

 

踵部脂肪体炎のリハビリテーション

具体的なリハビリ方法は↓の記事で紹介しています。

実際に行うメニューが見たい方はURLページを確認してみてください。

 

 

本ページでは、リハビリの全体的な流れや考え方を説明しています!

リハビリのポイントは、「炎症のコントロール」、「クッション材・テーピングの活用」、「踵の負荷になる動作の改善」です。

受傷直後は、痛みを感じさせない(踵に負担をかけない)ことが最優先です!

踵は歩くだけで負担がかかりますので、クッション材を使用したり、踵をつかないように歩く工夫をするなど炎症が早く無くなるように工夫して過ごしましょう。

 

※リハビリの期間は目安ですので、自分に合った進め方をしましょう!

 

炎症期(歩いて痛い ~約1週間)
・RICE処置
・足首、足底周囲のほぐし!(←足首周囲の動き・血行の改善)
・荷重なしで足首周囲の筋トレ!(←座ってカーフレイズ、チューブエクササイズなど)
・体幹とお尻の筋肉を鍛える!(←体幹と殿筋の筋トレ)

あきと
踵部脂肪体へ負荷をかけないこと、
次のステップのために足首周囲・体幹を安定させることが重要です!
リハビリ前期(歩いても痛くない 1週間〜2週間)
・足首、足底周囲のほぐし!(←継続)
・体重をかけた足首周囲の筋トレ!(←立ってカーフレイズなど)
・その他の体重をかけた筋トレをする!(←スクワット、片脚スクワット、ランジなど)
・体幹とお尻の筋肉を鍛える!(←体幹と殿筋の筋トレ)

あきと
スクワットなどは重心が後ろに残らないように意識してやってみましょう!
リハビリ中期(ジャンプが痛くない 2〜4週間)
・ホップなどのジャンプエクササイズを開始する!(←ジャンプ着地の衝撃でも足首を固定する)
・ジョギングを開始する!
・少しずつ直線のランニングスピードをアップする!
ジョギングを開始する前に下の①②を達成できるようにしましょう!
①片足カーフレイズ30回
②ケンケンの着地で踵が安定している(つま先が接地している時に、踵と床面の距離がキープできている)

あきと
ケンケンでも安定できれば、足首の安定性はOKです!
リハビリ後期(ランニングしても痛くない 3週〜6週)
・スプリント、ステップワーク、ジャンプの練習をする!(←アジリティトレーニングなど)
・リアクション、対人動作の練習とする!(←リアクションドリル、対人練習など)

あきと
動いた後の圧痛は要チェックです!
復帰期(強度を上げても痛くない・腫れない 4〜8週)
・1〜2週間かけて段階的に練習に参加しましょう!

あきと
「圧痛」がでてこないかチェックしながら復帰しましょう!
踵部脂肪体炎とヒールカップ・テーピング
踵への衝撃を防ぐために、ヒールカップが有効な場合が多いです(図5)!
また、脂肪体の位置を安定させるテーピングも有効です。
踵 クッション ヒールカップ インソール
図5:ヒールカップ(クッション)のイメージ図。踵のクッションが有効である場合が多いです。痛みが強い場合は日常生活でも有効に活用しましょう。

まとめ

ここまで、踵部脂肪体炎の方針やリハビリテーションについて書いてきました。

踵部脂肪体炎は初期の管理が大切なケガですので、基本をしっかりおさえながらリハビリをしていきましょう!

 

あきと
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参考文献

[1]Alison H Chang et al., What do we actually know about a common cause of plantar heel pain? A scoping review of heel fat pad syndrome. J Foot Ankle Res. 2022 Aug 16;15(1):60.

[2]Oktay Belhan et al., The thickness of heel fat-pad in patients with plantar fasciitis. Acta Orthop Traumatol Turc. 2019 Nov;53(6):463-467. 

 

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