肘関節脱臼とリハビリテーション

今回は肘関節脱臼(elbow dislocation)をしてしまったときの対処法について書いていきます。

肘関節脱臼は、脱臼の中でも肩関節脱臼に次いで2番目に多いケガです[]。

その約半数がラグビーなどのスポーツで生じる厄介なケガなんです。

今回はそんな肘関節脱臼について解説していきたいと思います!

 

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肘関節脱臼とは?

肘関節脱臼とは、肘関節が脱臼していしまっている状態をさします(図1)。

肘を伸ばした状態で地面に手をついて生じる「過伸展損傷」と手を開いた状態で地面に手をつき生じる「後外側回旋損傷」がありますが、殆どは過伸展損傷だと考えられています[]。
肘関節脱臼 レントゲン
図1:肘関節脱臼のレントゲン写真。

 

肘関節脱臼は、肘関節内側側副靱帯(MCL)や外側側副靭帯(LCL)の損傷、筋肉の損傷、神経の損傷、骨折などを合併することも多いため、とても厄介なケガです。

 

あきと
とても大変なケガなので、丁寧なリハビリが重要になります。

肘関節脱臼を起こしやすいシーン

前述したように、転倒して手をついたときに生じることが多いです。

ラグビーや体操競技、スケートやチアリーディングなどで転倒し手を床についた瞬間に生じます。

あきと
肘が抜けた感覚や「バキッ」という音が聞こえた場合はすぐに病院に行きましょう。

 

 

肘関節脱臼のよくある症状

・肘関節が腫れている
・肘関節がとても痛い
・肘関節が変形している
・肘の曲げ伸ばしができない
肘関節の「痛み」「腫れ」「変形」が大きな特徴です。

あきと

同時に皮膚神経の損傷が起きている可能性もあります。
しびれがある、指が動かない場合も注意が必要です。

 

病院で行う検査

まず、レントゲン検査によって、脱臼の方向や骨折の有無を確認します。

CT検査では、レントゲンで確認できない細かい骨折の有無を確認することができ、MRI検査では、靭帯や筋肉の損傷などを確認することができます。

少し症状が落ち着いた後は、エコー検査では肘MCLの緩みを確認することも可能です。

 

一般的には、問診(怪我した状況の確認など)、視診(変形や腫れの有無)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(靭帯や筋肉、神経の損傷のチェック)などを行います。

             

肘関節脱臼と診断されたら

保存療法靭帯の再建手術を選択して治療を行います。

靭帯再建手術の適応は明確に基準があるわけではありませんので、専門の先生の説明をしっかりと聞き選ぶようにしましょう。大きな骨折や顕著な靭帯の緩みがない場合は保存療法が適応される場合が多い印象です。

スポーツ復帰する時は、「肘を守ることができる筋力」、「転倒時に肘に負担がかからない動作の習得」が必要不可欠です。

肘関節脱臼後は、腫れなどの症状も多く、管理が非常に重要になりますので、しっかりと病院でサポートを受けながら段階的にリハビリを行いましょう!

以下に、保存療法のリハビリテーションの流れを書いていきます。

手術療法のリハビリテーションについては、肘内側側副靱帯(MCL)損傷とリハビリテーションのページを御覧ください。

 

 

肘関節脱臼のリハビリテーション

基本的にはこの保存療法でリハビリを行い、復帰を目指します!

保存療法のリハビリテーション

期間は目安ですので、専門医の先生の指示に従って進めましょう!

 

リハビリを進めるためのチェックポイント!
✅ 腫れ・痛みが悪化していないこと!
リハビリの負荷を上げた時に、「リハビリ中」「リハビリ後」「翌日朝」の悪化がなければOKです!
✅ 肘の曲げ伸ばしがスムーズで左右差がない
✅ 肘の内側の筋肉を鍛える
✅ 肩甲骨・体幹が安定している
✅ 転倒時に恐怖感なく受け身をとることができる
炎症期・固定期間(受傷後10日~3週間ほど)
RICE処置
・固定
・肩甲骨周囲のストレッチ
・前腕(手首周囲)、上腕(肩周囲)の筋肉のマッサージ

あきと
固定とRICE処置はとても大切です!
靭帯の緩みを残さないためにも、しっかりと固定しましょう。
一方で、固定していると肩甲骨周囲や上腕、前腕の筋肉がとても硬くなりますので、簡単にマッサージしておくと固定解除後に肘を動かしやすくなります。
リハビリ前期(2週〜4週)
・肘の屈曲・伸展可動域を改善する!(←腫れの改善・周囲の筋肉のマッサージ)
・痛みのない範囲で肘内側の筋トレ!(←マイルドな浅指屈筋、尺側手根屈筋のエクササイズ)
・肩甲骨・体幹の筋トレ!(←体幹と肩甲骨周囲筋の筋トレ)

あきと
肘の屈曲伸展可動域の左右差を無くすことです!
リハビリ中期(3週〜8週)
・肘内側の筋トレをレベルアップ!(←浅指屈筋、重りを持って尺側手根屈筋のエクササイズ)
・肩甲骨・体幹の筋トレレベルアップ!(←体幹と肩甲骨周囲筋の筋トレ)
・上肢を使うスポーツの場合は体重をかけない動きのチェックをスタート!

あきと
★肘曲げ伸ばしOK
★肘に力を入れても痛くない
そうなったらスポーツ動作のチェックを開始しましょう!
リハビリ後期(6週〜10週)
・体重をかけたエクササイズをする!(←四つ這いや腕立て伏せなど)
・色々なスポーツ動作をスタート!(←投球・投擲・軽いタックル練習など)
・受け身の練習を必ずおこなう!

あきと
転倒してケガをした場合は、転倒時の恐怖感を取り除くのが大切です!
受け身の練習を徐々に開始しましょう!
復帰期(8〜12週)
・1〜2週間かけて段階的に練習に参加しましょう!

あきと
練習後にアイシング肘の曲げ伸ばしチェックを必ず行いましょう!
肘が伸びにくい場合は、筋肉をマッサージしてしっかり伸ばしてから次の練習に取り組みましょう!

まとめ

ここまで、肘関節脱臼の方針やリハビリテーションについて書いてきました。

肘関節脱臼は管理が難しいケガですので、基本をしっかりおさえながらリハビリをしていきましょう!

 

あきと
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参考文献

[1]Haan JD, et al: Simple elbow dislocations: a systematic review of the literature. Arch Orthop Trauma Surg. 2010 Feb;130(2):241-9.

[2]楢﨑慎二:肘関節脱臼 -講座スポーツ整形外科2 上肢のスポーツ外傷・障害- 池上博泰 編集. 中山書店. 2022. 188-197

 

 

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