膝前十字靭帯(ACL)損傷とリハビリテーション

膝前十字靭帯(以下、ACL)損傷は、最もスポーツ選手を困らせる怪我と言われています。

スポーツ復帰には手術が必要とされ、早くても手術から6ヶ月かかります。

この記事ではACL損傷してしまった方、ご家族、コーチの方へ、ACL損傷後の対応やリハビリについて書いていきます。

 

スポンサーリンク

膝ACL損傷とは?

膝ACL損傷とは膝の中にある大腿骨と脛骨を繋いでいる膝ACLが損傷(部分断裂、完全断裂など)している状態をさします。

この膝ACLは膝がズレることを防ぐ靱帯です。

そのため、断裂すると膝がズレやすくなり、膝がズレることで関節のクッションの役割を果たしている半月板や関節軟骨の損傷を引き起こします。

また、関節の中で独立している靱帯のため、断裂すると治癒せずにそのまま無くなってしまうとも言われています。

膝ACLは無いと困るのに、自分では治癒できないという、やっかいな靱帯なんです。
膝前十字靭帯 膝ACL

膝ACL損傷を起こしやすいシーン

ACL損傷は「接触型損傷」と「非接触型損傷」に分類することができます。

両者ともに膝が「外反する(内側に入る)」ことでALC損傷してしまうことが多いです。

非接触型では、方向転換動作時やジャンプ着地時に受傷することが多く、「膝が内に入った」、「バキっと音がした」などと訴えることが多いです。

膝が内に入って膝を痛めた」場合はACL損傷をしている可能性があるため、必ず病院を受診しましょう。

 

膝ACL損傷後のよくある症状

良くある症状は

ほぼ100%出る症状
膝が腫れる

あきと
膝に血がたまっていたら、ACL損傷の可能性が非常に高いです...
約90%に出る症状
・膝が痛い
・曲げ伸ばしがしにくい
・膝に力が入らない

あきと
まれに、痛くないという方もいらっしゃるので「痛くないからOK」というのは危ないかもですね。
まれに出る症状
・膝カックンのような症状(膝くずれ/Giving way)
・膝が曲げ伸ばしできない

あきと
膝くずれは、ケガをした直後よりも時間が経ったときに出やすい症状です。
膝が曲げ伸ばしできない場合は、ロッキングといって半月板損傷を合併している場合もあります。すぐに病院に行きましょう!

病院で行う検査

病院で膝ACL損傷と確定診断するためには、MRI(磁気共鳴画像)検査が必要です。

あきと
MRIを撮らずに診断することは無いので、必ずMRIを撮ってくれる病院に行きましょう!
一般的には、問診(怪我した状況の確認など)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(Lachman test、pivot shift test、Nテスト、膝蓋跳動テスト)などを行いACL損傷の疑いがある方はMRI検査となります。
膝前十字靭帯損傷 膝ACL損傷 MRI

膝ACL損傷と診断されたら

治療方法を選ぶことになります。

手術療法保存療法です。

「スポーツ復帰を目指すときは、ほとんど手術療法となります。」

それぞれの考え方を説明していきますね。

 

膝ACL損傷の手術療法

膝ACL再建術が行われます。

一般的に膝の前の膝蓋靭帯を採取してACL再建を行うBTB法(Bone-Tendon-Bone法)と、膝の内裏の半腱様筋(+薄筋)を採取して行うST(G)法(Semitendinosus(Gracilis)法)のどちらかが行われます。

どちらの方法でも術後のリハビリ内容に多少差がありますが、復帰時期はおおよそ同じです。

あきと
執刀医の先生によってオススメな方法が違う場合があるので、先生とよく相談しましょう!

手術療法のリハビリの進め方

術後早期
・腫れを無くす!
・膝を伸ばす!
・太腿(内側広筋)の力を入れる!
・患部外の筋トレをする!
・正しく歩けるようになる!(足を引きずらない、膝を伸ばして歩く)

★具体的なリハビリメニューはこちら↓

術後1-2ヶ月
・膝を曲げられるようにする!(3ヶ月で正座できるくらい)
・体重をかけるトレーニングを開始する(スクワットなど)
術後3ヶ月
・ジョギングスタート!
・筋力測定で健側(怪我していない足)の60%以上を目指す!
術後4~5ヶ月
・30分ジョギングが問題ない
・加速走でランニングスピードアップ!
・横方向への動きの練習(ゆっくりとした動作で)
・筋力で70%以上!

あきと
加速走は、徐々に加速していき目標スピードに達したら徐々に減速する走り方です!
急な加速やストップ動作にならないから安全ですね。
術後5〜10ヶ月
・全力疾走!
・素早い横方向へのステップ動作、ジャンプ動作を開始!
・基礎的な練習に合流しはじめる(執刀医の先生からOKが出たら)
・筋力で80%以上!
術後6-12ヶ月
・部分合流→全合流!
・筋力90%以上!

あきと
加速走は、徐々に加速していき目標スピードに達したら徐々に減速する走り方です!
急な加速やストップ動作にならないから安全ですね。
復帰〜術後2年
再断裂、反対足のACL損傷が非常に多い時期です。
だいたい5人に1人(20%)の選手が再受傷(反対側損傷含む)をしてしまうと言われています。
そのため、術後2年までは、再発予防の筋トレ、動作練習をかならず続けましょう!!

膝ACL損傷の保存療法

正直、あまりオススメしない方針ですが、状況によって選択することがあります。

 

  • 絶対に出ないといけない大会が、1〜4ヶ月後にある
  • 成長期でまだ手術ができない
  • スポーツはやらないので手術したくない

 

上記の場合は保存療法を選択する場合もありますが、選手本人やご家族、コーチは保存療法のリスクをしっかりと理解した上で選択する必要があります。

保存療法のデメリット
  • 膝くずれを起こしやすい
  • 膝関節が不安定なため、半月板損傷や変形性関節症を引き起こしやすい

あきと
半月板損傷や変性性膝関節症は一度なってしまうと治癒があまり見込めません...
痛みが良くなることはありますが、傷ついた半月板や変形した関節は一生ものになってしまいます...
そのため、短期的に保存療法を行っても、「目標の大会に出場した後」、「成長が落ち着いた後(骨端線の閉鎖)」に手術を行うことがほとんどです。

日常生活だけでも膝くずれや半月板損傷が起こることがあるため、「昔ACL損傷したけど放っておいた人」が10年、20年経ってから手術するケースもあります。

あきと
価値観は人それぞれですが...
半月板損傷がひどくなる前に手術した方が良いかもしれませんね。

 

保存療法のネガティブなことばかり書きましたが、保存療法で頑張っている選手もいると思いますので、そのリハビリについて書いていきます!

保存療法のリハビリテーション

保存療法でも大きなリハビリの流れは同じです。

  1. 腫れを無くす!(←アイシングの徹底)
  2. 可動域を改善する!(←膝の曲げ伸ばし、周囲の筋肉のマッサージ)
  3. 太ももの前と後の筋肉を鍛える!(←大腿四頭筋:特に内側広筋、ハムストリグスの筋トレ)
  4. お尻の筋肉を鍛える!(←外旋筋、小殿筋、中殿筋、大殿筋の筋トレ)
  5. 体重をかけた筋トレをする!(←スクワット、片脚スクワット、ランジなど)
  6. ステップワーク、ジャンプの練習をする!(←アジリティトレーニングなど)
  7. リアクション、対人動作の練習とする!(←リアクションドリル、対人練習など)
手術療法と違うところは、各段階がクリアできればどんどんリハビリを進めることができる点です。
受傷後早期は1.アイシングを徹底的に行い、痛みが落ち着いたら2〜4をすすめ、
「腫れOK」、「可動域OK」、「力の入り具合OK」となったら5以降を段階的にレベルアップしていきます!

あきと
手術後は、調子が良くても 焦らず執刀医の先生に従ったスケジュールにしましょう!
もちろん保存療法も病院の先生と相談しながら復帰時期を上手くコントロールしましょうね。

まとめ

ここまで、膝ACL損傷後の治療方針やリハビリテーションについて書いてきました。

最近では、信頼できるスポーツドクターやスポーツに携わる理学療法士(PT)、アスレティックトレーナーさんがたくさんいます。

ACL損傷をしてしまっても、専門家の先生の病院を受診することで、少しでも良い状態で復帰できることを願っています。

 

あきと
【お知らせ】
「もっとこれが知りたい!」「こんな記事を書いて欲しい!」「ケガのことを相談したい!」
などご要望をお受けしています!
〈お問い合わせ〉からお気軽にご連絡ください!
スポンサーリンク
おすすめの記事