今回は下前腸骨棘裂離骨折(Anterior Inferior Iliac Spine (AIIS) Avulsion Fracture )の対処法について書いていきます。
AIIS裂離骨折は若いアスリートに起こりやすい骨盤の骨が剥がれてしまうケガです。
多くの場合はしっかり休めばスポーツ復帰可能ですが、筋力や身体の使い方をしっかりと改善しないと痛みが残ってしまう場合もあります。
今回はそんな下前腸骨棘裂離骨折についてリハビリのポイントを解説していきたいと思います!
目次
下前腸骨棘(AIIS)裂離骨折とは?
AIIS裂離骨折は、骨盤の前側にある下前腸骨棘という部位が、筋肉や腱に強く引っ張られることによって剥がれてしまうケガです(図1)。
特に、骨の成長がまだ完了していない14歳前後の成長期のアスリートに多く発生します。
228件の骨盤裂離骨折を調査した研究では、骨盤の裂離骨折の約半数(49%)が下前腸骨棘であり、76%が男性であったと報告しています[1]。
基本的には保存療法でスポーツ復帰可能ですが、剥がれた骨片の転移が大きい場合や癒合不全を起こしてしまう場合には手術が必要なこともあります[2]。
成長期の選手が「股関節が痛い」といって足を引きずっていたら要注意です。
AIIS裂離骨折を起こしやすいシーン
14才前後の骨端線閉鎖前のアスリートに多く起こります。
骨盤の裂離骨折は陸上競技やサッカー、バスケットボールなど、急激なダッシュ、キック動作が多い競技で発生すると報告されており、
特にAIIS裂離骨折の50%はキック動作で生じ、その次にスプリントでの受傷が多いとされています[1]。
AIIS裂離骨折のよくある症状
・股関節前面(AIISの場所)を押すと痛い
・股関節を伸展(足を後ろへ引く)、膝を曲げるストレッチをすると痛い
・股関節を曲げる、膝を伸ばすように力をいれると痛い
下前腸骨棘裂離骨折の主な症状は、骨盤前部の鋭い痛みです。
痛みは、特に歩行や走行、ジャンプなどの動作時に悪化し、患部に腫れや圧痛がみとめられます。
病院で行う検査
下前腸骨棘裂離骨折が疑われる場合、まずはX線撮影を行います。
また、詳細な状態を把握するために、MRI検査やCTスキャンを使用することもあります。
一般的には、問診(痛みの出る状況の確認など)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(筋肉の伸長時・収縮時痛)などを行います。
AIIS裂離骨折と診断されたら
多くの場合は保存療法で復帰を目指します。
一方で、裂離した骨片の転位が15mm以上の場合は手術療法のほうがスポーツ復帰が早かったとの報告もあります[3]。
しっかりと専門のスポーツドクターに相談しながら治療方針を決めていきましょう。
ここからは、AIIS裂離骨折のリハビリについて説明していきますね。
AIIS裂離骨折のリハビリテーション
保存療法でのリハビリのポイントを解説していきます!
リハビリのポイントは、「患部の治癒」「股関節の動きの改善」、「体幹の安定性の改善」、「全身の連動性の改善」です!
・腫れ・痛みが悪化していないこと!
・呼吸の練習!(←腹圧など)
・その他痛みの出ない患部外トレーニング
病院の先生に許可をもらったエクササイズを行いましょう!
・もも前のストレッチ!
・お尻、股関節、太ももの筋トレ!
・腹筋などの体幹の筋トレ!
・痛みなく患部の筋トレを開始してから2〜3週後の徐々にジョギングをスタート!
・少しずつ直線のランニングスピードをアップする!
①股関節のストレッチで左右差なし
②片脚のスクワットが左右とも安定してできる
③もも上げ動作で、痛みも左右の感覚の差もない
・各種スポーツ動作を開始する!(キック動作などは要注意!)
・リアクション、対人動作の練習とする!(←リアクションドリル、対人練習など)
運動した後の押した痛みと股関節の筋肉の硬さは要チェックです!
再発しないように復帰後のチェックも行いましょう!
まとめ
下前腸骨棘裂離骨折は、若いアスリートに多く見られるケガで、スポーツ活動中の急激なダッシュやキックが主な原因となります。
正しい身体の使い方を覚えないと痛みが再発しやすいケガですので、基本をしっかりおさえながらリハビリをしていきましょう!
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参考文献
[1]Schuett DJ, et al. : Pelvic Apophyseal Avulsion Fractures: A Retrospective Review of 228 Cases. J Pediatr Orthop. 2015 Sep;35(6):617-23.
[2]西尾啓史 ほか:骨盤裂離骨折 -講座スポーツ整形外科4 体幹のスポーツ外傷・障害- 西良浩一 編集. 中山書店. 2022. 164-169