腸腰筋の肉ばなれ・腱周囲炎とは?股関節前面の痛みとリハビリ法を解説

今回は腸腰筋肉ばなれ・腱周囲炎(Psoas Syndrome)の対処法について書いていきます。

股関節の前方の痛みの原因は「腸腰筋の肉ばなれ」や「腱周囲炎」かもしれません。

走る・蹴る・ジャンプといった動作で痛みが出る場合、要注意です。

無理を続けると回復が長引くため、早めの対処が大切です。

この記事では、腸腰筋のケガの原因やリハビリのポイントをわかりやすく解説します。

 

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腸腰筋肉ばなれ・腱周囲炎とは?

腸腰筋は、腰椎に付着する大腰筋と骨盤(腸骨)に付着する腸骨筋から構成される筋肉群です。

股関節の屈曲や姿勢の維持に重要な役割を果たしています(図1)。

 

腸腰筋 股関節屈曲 肉ばなれ
図1:腸腰筋の解剖と作用のイメージ図。腰椎に付着する大腰筋と骨盤の腸骨に付着する腸骨筋をあわせて腸腰筋と呼んでいます。

 

腸腰筋肉ばなれとは、その腸腰筋が損傷している状態をさします。

鼡径部痛のあるアスリートのMRI検査画像を調査した研究では、21%のアスリートに腸腰筋に損傷や炎症の画像所見が認められたと報告されています[]。

この研究では、腸腰筋損傷所見のあったアスリートが8.6±8.3週で復帰したのに対して、腸腰筋の腱周囲に炎症があったアスリートは20.1±13.9週で復帰していたとも報告されています[]。

 

あきと

腸腰筋の肉ばなれよりも、腸腰筋腱周囲の炎症のほうが復帰まで時間がかかるようです。

腸腰筋肉ばなれ・腱周囲炎になりやすいシーン

腸腰筋は、スポーツにおいては、走る・跳ぶ・キックするなどの動作で大きく関与します。

ランナーやダンサー、走り高跳びの選手やサッカー選手などに生じやすいです[]。

急にダッシュする、急停止する、ジャンプするなどの急激な動作や過剰なトレーニング、長時間の運動などによって慢性的な炎症を引き起こすこともあります。

筋力不足や柔軟性の低下、体幹の安定性の低下によって腸腰筋に過剰な負担がかかることがしばしばあります。

 

腸腰筋肉ばなれ・腱周囲炎のよくある症状

・股関節を伸ばす・力を入れていると痛い
・キックをすると痛い
・走ると痛い
・歩くと痛い
・腹筋をすると痛い

主な症状は、腸腰筋のストレッチ痛と収縮時痛です。

 

腸腰筋 肉ばなれ 症状
図2:腸腰筋肉ばなれの症状のイメージ図。股関節伸展のストレッチ痛や股関節屈曲の収縮時痛が生じます。痛みは股関節前面に生じます。

 

あきと

これらの症状は他の股関節疾患でも出やすいですので、病院でチェックしてもらいましょう!

 

 

病院で行う検査

腸腰筋肉ばなれ・腱周囲炎の診断は、一般的に診察とMRI検査所見で行います。

X線で骨や関節のチェックを行いますが、腸腰筋の所見はX線では見つけることはできません。

MRI検査で腸腰筋の損傷や腱周囲炎を確認する方法が一般的です。

超音波ガイド下で腸腰筋に注射を行い、痛みの変化をみる検査も行われているようです[]。

診察では、問診(痛みの出る状況の確認など)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(筋肉の伸長時・収縮時痛)などを行います。

             

腸腰筋肉ばなれ・腱周囲炎と診断されたら

基本的には保存療法で復帰できると報告されています[]。

あきと

しっかりと専門のスポーツドクターに相談しながら治療方針を決めていきましょう。

ここからは、腸腰筋肉ばなれ・腱周囲炎のリハビリについて説明していきますね。

 

腸腰筋肉ばなれ・腱周囲炎のリハビリテーション

保存療法でのリハビリのポイントを解説していきます!

リハビリのポイントは、「患部の治癒」「股関節・骨盤の歪み・動きの改善」、「体幹の安定性の改善」、「全身の連動性の改善」です!

リハビリを進めるためのチェックポイント!
・痛み、可動域が悪化していないこと!
 リハビリの負荷を上げた時に、「リハビリ中」「リハビリ後」「翌日朝」の悪化がなければOKです!
リハビリ前期(筋肉の伸長時痛・収縮時痛がある時期 1週間〜6週間)
・骨盤・背骨の歪みを改善する(←胸郭、股関節、太ももの筋肉のストレッチ・ほぐし)
・呼吸の練習!(←腹圧など)
・痛みが出ない範囲で腸腰筋のストレッチ、自重エクササイズ

・その他痛みの出ない患部外トレーニング

あきと
腹筋の筋トレでも患部に負担がかかってしまうため、エクササイズ内容は十分注意して病院の先生に許可をもらったエクササイズを行いましょう!
リハビリ中期(伸長時痛・収縮時痛なし 2〜10週間)
・股関節のストレッチ!
・お尻、股関節、太ももの筋トレ!
・腹筋などの体幹の筋トレ!
・スクワット・片脚スクワットなどの荷重トレーニング!
・痛みなく患部の筋トレを開始してから1~2週後の徐々にジョギングをスタート!
・少しずつ直線のランニングスピードをアップする!
ジョギングを開始する前に下の①~③を達成できるようにしましょう!
①股関節のストレッチで左右差なし
②片脚のスクワットが左右とも安定してできる
③もも上げ動作で、痛みも左右の感覚の差もない

あきと
ドクターの許可が出てから、痛みと動作が安定したのを確認し、ジョギングを開始しましょう!
リハビリ後期(リハビリ中期の強度を上げても痛みが出ない 4週〜16週)
・スプリント、ステップワーク、ジャンプの練習をする!(←アジリティトレーニングなど)
・各種スポーツ動作を開始する!(キック動作などは要注意!)

・リアクション、対人動作の練習とする!(←リアクションドリル、対人練習など)

あきと
キック、ダッシュの動作は患部への負担が大きいため、特に注意が必要です!
運動した後の押した痛み股関節の筋肉の硬さは要チェックです!
復帰期(競技の強度を上げても痛くない 6〜20週)
・1〜2週間かけて段階的に練習に参加しましょう!

あきと
「股関節可動域」と、「筋の硬さ」は要注意です!
再発しないように復帰後のチェックも行いましょう!

まとめ

腸腰筋の痛みは、早期発見と適切なリハビリが回復のカギになります。

無理をせず、身体のサインに耳を傾けながら段階的に回復を目指しましょう。

正しい身体の使い方を覚えないと痛みが再発しやすいケガですので、基本をしっかりおさえながらリハビリをしていきましょう!

あきと
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参考文献

[1]Tsukada S, et al., : Iliopsoas Disorder in Athletes with Groin Pain. JB JS Open Access. 2018 Mar 12;3(1):e0049. 

[2]Alexander M, : Psoas Syndrome. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2025 Jan-.

 

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