今回は腰椎分離症になってしまったときの対処法について書いていきます。
腰椎分離症は、スポーツを行っている中学生〜高校生で多く発生する腰椎の関節の間部分の疲労骨折です。
放っておくと骨折が癒合しなくなってしまう可能性があるため、「スポーツを休んで骨を癒合させるのか」、「スポーツを休まず骨折したままにするのか」治療方針を決定する必要があります。
また、小学生の骨が若い内に発生した分離症は、腰椎分離・すべり症に進行してしまう可能性があり、手術適応となる可能性もあります。
今回はそんな腰椎分離症について解説していきたいと思います!
目次
腰椎分離症とは?
腰椎分離症とは、上下の腰椎を繋いでいる椎間関節の間に位置している「椎間関節突起間部(Pars interarticularis)」の疲労骨折です(図1)。
8〜18歳(平均14歳)の男性スポーツ選手に多いと言われています[2]。
分離症は疲労骨折であるため、初期はヒビから始まり、徐々に亀裂が進行していくことで最終的に骨折部が離開して分離症が完成します。
そのため、発見される時期によって治療法の選択が異なってきます。
分離症はステージ分類がとても重要ですので、説明していきます。
腰椎分離症のステージ分類
※ステージ分類は以下の論文から引用しています。
ステージ分類 | 初期 | 進行期 | 終末期 |
CT画像の所見 |
亀裂がある(Hair line)
|
骨折部に明らかな隙間がある(Clear gap)
|
偽関節状態である(骨折の治癒が停止し、骨折部周囲が白くなっている)
|
MRI画像の所見 | ○全例T2での高信号あり(白くなっている) |
○T2での高信号あり(白くなっている) ×T2での高信号なし |
×:全例T2での高信号なし |
骨癒合率(期間)[3] | 94%(約3ヶ月) |
○:64%(約6ヶ月) ×:27%(約6ヶ月) |
0% |
(※骨癒合率については、[3]より新しい文献[1]を引用しています。)
つまり、骨の癒合率の観点では、以下のようにまとめることができます。
○進行期:MRIで高信号があれば約6ヶ月で64%が癒合する
○終末期:癒合は期待できない
分離症の診断で有名なのはレントゲン斜位像のスコッチテリアの首輪サインですが、
これはすでに終末期に近いことを意味しています。
骨は癒合させるべきなのか?
ステージ分類では、骨の癒合率の観点から説明しました。
ここでは「骨が癒合すること」、「骨が癒合しないこと」のメリットデメリットを説明していきます!
・腰椎の骨性の安定性が保たれるので、今後の人生において腰痛になるリスクを下げることができる
・すべり症に移行するリスクを下げることができる
×デメリット
・癒合まで3〜6ヶ月スポーツを休止しなければならない
・(スポーツを休止したのに癒合しないこともある)
・痛みのコントロールができれば早期復帰を目指せる
×デメリット
・腰椎の骨性の安定性が保たれないので今後の人生において腰痛になるリスクが上がる
・50歳以降ですべり症に移行するリスクが上がる
・小学生で骨年齢が若い(cartilaginous stage)場合は、10代のうちにすべり症に進行する可能性が高い(約80%)。
すべり症とは、本来はキレイに積み重なっている腰椎が、前方にずれてしまうことをさします(図2)。
前方にずれてしまうことで、後方を走行している神経を傷つけてしまいます。
中学生・高校生に起こる多くの分離症は骨年齢が成熟に近い状態のため、50歳以降のすべり症のリスクが上がります。
一方で小学生の分離症は、すぐにすべり症に進行するリスクが非常に高いため、骨癒合させることを強くオススメします。
腰椎分離症を起こしやすいシーン
分離症が起こる関節突起間部には、「腰を反る(伸展)」や「回旋する(反対側へ)」ことで負荷がかかると言われています[4]。
また、腰椎の側屈が加わることで椎間関節への圧力が増えることも報告されているため[5]、骨盤や体幹がグラグラしながらスポーツをすることが分離症に起因すると考えられています。
腰椎分離症のよくある症状
これらの症状がある場合は、必ず整形外科を受診しましょう。
病院で行う検査
腰椎分離症の診断に必須なのが、診察とCT検査です。
CT検査で腰椎分離症の進行期の場合は治療方針を決めるためにMRI検査も必須となります。(初期、終末期でもMRIを取る必要があることもあります。)
診察の流れは、問診(痛みがでる状況の確認など)、触診(棘突起の圧痛のチェック)、スペシャルテスト(Kempテスト)などを行います。
その後レントゲン検査で終末期の骨折の有無を確認、腰椎分離症の疑いがあればCT検査、MRI検査を行います。
腰椎分離症と診断されたら
・約3ヶ月後にCT検査で癒合を確認して運動再開
・約6ヶ月後にCT検査で癒合を確認して運動再開
・約6ヶ月後も癒合していなければ、「安静継続」or「痛み基準で復帰めざす」を医師と相談
もしくは、
・約6ヶ月間、硬性コルセット固定にて安静
・約6ヶ月後にCT検査で癒合を確認して運動再開
・約6ヶ月後も癒合していなければ、「安静継続」or「痛み基準で復帰めざす」を医師と相談
一般的にはこのような流れで方針を決めていきます。
一方で、「骨癒合しないデメリット」をしっかりと理解した上で、初期や進行期でも安静にせず運動を続けるという選択をする選手もいます。
その場合は、選手本人、ご両親、チーム関係者、担当医が納得した状態で進めて行きましょう。
腰椎分離症のリハビリテーション
症状の強い状態から順番に解説してきます!
自分の症状に当てはまる部分をご参照ください!
体幹の基礎トレーニング習得も大切です!
・腹筋、背筋のインナーマッスルの筋トレ強度up!
そうなると、動きが硬くなり、姿勢が悪くなりやすいので注意が必要です!
まとめ
ここまで、腰椎分離症の方針やリハビリテーションについて書いてきました。
腰椎分離症は治療方針の決定がとても重要です、考え方を頭に入れながら病院の先生と相談していきましょう!
「もっとこれが知りたい!」「こんな記事を書いて欲しい!」「ケガのことを相談したい!」
などご要望をお受けしています!
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参考文献
[1]西良浩一ら.脊椎の疲労骨折−腰椎分離症−.臨床スポーツ医学.27(4).411-421.文光堂.2010