腰椎分離症とリハビリテーション

今回は腰椎分離症になってしまったときの対処法について書いていきます。

腰椎分離症は、スポーツを行っている中学生〜高校生で多く発生する腰椎の関節の間部分の疲労骨折です。

成長期のスポーツ選手で「腰を反って痛い」、「背骨を押して痛い」の2つが当てはまると50%の確率で腰椎分離症だと言われています[

放っておくと骨折が癒合しなくなってしまう可能性があるため、「スポーツを休んで骨を癒合させるのか」、「スポーツを休まず骨折したままにするのか」治療方針を決定する必要があります。

また、小学生の骨が若い内に発生した分離症は、腰椎分離・すべり症に進行してしまう可能性があり、手術適応となる可能性もあります。

今回はそんな腰椎分離症について解説していきたいと思います!

あきと
「病院治療方針の説明がうまく理解できなかった人」、「治療方針どうするか迷っている人」、「10代のスポーツ選手で腰痛が2週間以上続いているのにCTもしくはMRIを取ったことがない人」は是非読んでください!
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腰椎分離症とは?

腰椎分離症とは、上下の腰椎を繋いでいる椎間関節の間に位置している「椎間関節突起間部(Pars interarticularis)」の疲労骨折です(図1)。

8〜18歳(平均14歳)の男性スポーツ選手に多いと言われています[]。

腰椎分離症 関節突起
図1:腰椎分離症のイメージ図。上関節突起と下関節突起の間の部分の疲労骨折です。

 

分離症は疲労骨折であるため、初期はヒビから始まり、徐々に亀裂が進行していくことで最終的に骨折部が離開して分離症が完成します。

そのため、発見される時期によって治療法の選択が異なってきます。

分離症はステージ分類がとても重要ですので、説明していきます。

 

腰椎分離症のステージ分類

※ステージ分類は以下の論文から引用しています。

Sairyoら. Conservative treatment of lumbar spondylolysis in childhood and adolescence: the radiological signs which predict healing. J Bone Joint Surg Br 91(2): 206-9. 2009[3]

 

ステージ分類 初期 進行期 終末期
CT画像の所見

亀裂がある(Hair line)

腰椎分離症 初期 レントゲン画像

骨折部に明らかな隙間がある(Clear gap)

腰椎分離症 進行期 レントゲン 画像

偽関節状態である(骨折の治癒が停止し、骨折部周囲が白くなっている)

腰椎分離症 終末期 レントゲン 画像

MRI画像の所見 ○全例T2での高信号あり(白くなっている)

○T2での高信号あり(白くなっている)

×T2での高信号なし

×:全例T2での高信号なし
骨癒合率期間)[3] 94%約3ヶ月

○:64%約6ヶ月

×:27%約6ヶ月

0%

あおい
終末期は、癒合率が0%になっていますね...

(※骨癒合率については、[]より新しい文献[]を引用しています。)

つまり、骨の癒合率の観点では、以下のようにまとめることができます。

癒合が期待できるステージ
○初期:約3ヶ月で骨はほぼ癒合する
○進行期:MRIで高信号があれば約6ヶ月で64%が癒合する
癒合があまり期待できないステージ
○進行期:MRIで高信号がなければ約6ヶ月たっても27%しか癒合しない
○終末期:癒合は期待できない

あきと
レントゲン検査のみではステージは決められないので注意が必要です!
分離症の診断で有名なのはレントゲン斜位像のスコッチテリアの首輪サインですが、
これはすでに終末期に近いことを意味しています。

骨は癒合させるべきなのか?

ステージ分類では、骨の癒合率の観点から説明しました。

ここでは「骨が癒合すること」、「骨が癒合しないこと」のメリットデメリットを説明していきます!

骨癒合のメリット・デメリット
メリット
 ・腰椎の骨性の安定性が保たれるので、今後の人生において腰痛になるリスクを下げることができる
 ・すべり症に移行するリスクを下げることができる
×デメリット
 ・癒合まで3〜6ヶ月スポーツを休止しなければならない
 ・(スポーツを休止したのに癒合しないこともある)
骨癒合しないことのメリット・デメリット
メリット
 ・痛みのコントロールができれば早期復帰を目指せる
×デメリット
 ・腰椎の骨性の安定性が保たれないので今後の人生において腰痛になるリスクが上がる

 ・50歳以降ですべり症に移行するリスクが上がる
 ・小学生で骨年齢が若い(cartilaginous stage)場合は、10代のうちにすべり症に進行する可能性が高い(約80%)。

すべり症とは、本来はキレイに積み重なっている腰椎が、前方にずれてしまうことをさします(図2)。

前方にずれてしまうことで、後方を走行している神経を傷つけてしまいます

中学生・高校生に起こる多くの分離症は骨年齢が成熟に近い状態のため、50歳以降のすべり症のリスクが上がります。

一方で小学生の分離症は、すぐにすべり症に進行するリスクが非常に高いため、骨癒合させることを強くオススメします。

腰椎分離症 腰椎すべり症
図2:腰椎すべり症のイメージ図。両側で分離症が起こると分離部からすべり症が生じます。

 

腰椎分離症を起こしやすいシーン

分離症が起こる関節突起間部には、「腰を反る(伸展)」や「回旋する(反対側へ)」ことで負荷がかかると言われています[]。

また、腰椎の側屈が加わることで椎間関節への圧力が増えることも報告されているため[]、骨盤や体幹がグラグラしながらスポーツをすることが分離症に起因すると考えられています。

あきと
腰椎の伸展・回旋は明確に良くないですが、根本的には姿勢の悪さや体幹の不安定性が関係していそうですね。

腰椎分離症のよくある症状

・10代のスポーツ選手で2週間以上腰が続いている
・腰を反ると痛い(反りながら捻るとさらに痛い)
・背骨を押すと痛い

これらの症状がある場合は、必ず整形外科を受診しましょう。

病院で行う検査

腰椎分離症の診断に必須なのが、診察とCT検査です。

CT検査で腰椎分離症の進行期の場合は治療方針を決めるためにMRI検査も必須となります。(初期、終末期でもMRIを取る必要があることもあります。)

診察の流れは、問診(痛みがでる状況の確認など)、触診(棘突起の圧痛のチェック)、スペシャルテスト(Kempテスト)などを行います。

その後レントゲン検査で終末期の骨折の有無を確認、腰椎分離症の疑いがあればCT検査、MRI検査を行います。

 

腰椎分離症 MRI

あきと
レントゲン検査だけで分離症の有無を判断することはできません。

あおい
ちゃんと検査してくれる病院に行けるといいですね。

腰椎分離症と診断されたら

ステージごとに記載してきます!
腰椎分離症 初期
・約3ヶ月間、硬性コルセット固定にて安静
・約3ヶ月後にCT検査で癒合を確認して運動再開
腰椎分離症 進行期 MRIで高信号あり
・約6ヶ月間、硬性コルセット固定にて安静
・約6ヶ月後にCT検査で癒合を確認して運動再開
・約6ヶ月後も癒合していなければ、「安静継続」or「痛み基準で復帰めざす」を医師と相談
腰椎分離症 進行期 MRIで高信号なし
・痛み基準で復帰を目指す

もしくは、
・約6ヶ月間、硬性コルセット固定にて安静
・約6ヶ月後にCT検査で癒合を確認して運動再開
・約6ヶ月後も癒合していなければ、「安静継続」or「痛み基準で復帰めざす」を医師と相談

腰椎分離症 終末期
・痛み基準で復帰を目指す

一般的にはこのような流れで方針を決めていきます。

一方で、「骨癒合しないデメリット」をしっかりと理解した上で、初期や進行期でも安静にせず運動を続けるという選択をする選手もいます。

その場合は、選手本人、ご両親、チーム関係者、担当医が納得した状態で進めて行きましょう。

 

腰椎分離症のリハビリテーション

リハビリの重要ポイント!

痛みが出る 腰を反る・捻るエクササイズは中止しましょう

症状の強い状態から順番に解説してきます!

自分の症状に当てはまる部分をご参照ください!

「痛み」が強い時期(安静初期)
・胸郭・胸椎、腰の筋肉ストレッチ&ほぐし
・股関節ストレッチ&ほぐし
・骨盤や脊柱の歪みの修正(上記のストレッチをしっかりやれば歪みは修整されていきます)
・腹筋、背筋のインナーマッスルのマイルドな筋トレ(腹横筋、多裂筋)
・姿勢の改善

あきと
この時期は、とことん柔軟性を改善していきましょう!
体幹の基礎トレーニング習得も大切です!

あおい
腰の周りの動きが硬いから、腰に負担がかかるんですね!
腰を無理に動かさなければ痛みが出ない時期
・少しずつダイナミックな骨盤、脊柱動かし
・腹筋、背筋のインナーマッスルの筋トレ強度up!
・インナーマッスルを意識しながらのスクワット開始

あきと
リハビリ中」、「リハビリ後」、「翌朝」の痛みを観察し、痛みのリバウンドがなければ少しずつレベルアップしましょう!
腰を動かしても痛くない、医師からジョギング開始許可が出た時期
・胸郭、脊柱、骨盤、股関節の可動域のチェック(この時期より前に可動域の問題を改善しておき、硬くなってないかチェックする)
・腹筋、背筋のインナーマッスルの筋トレ更にup(強度や継続時間をup、ダイナミックなトレーニングも行う)
・スポーツ動作の姿勢チェック、腹筋、背筋の収縮チェック

あきと
この時期は「スポーツ動作で姿勢が崩れない」、「疲れてきても良い姿勢をキープできる」が目標です!
すべての症状消失、復帰時期
・練習後の張りや硬さのチェック
・練習中の姿勢チェック
・体幹トレーニングは継続!

あきと
復帰して運動強度が上がると筋肉のハリが出やすいです。
そうなると、動きが硬くなり、姿勢が悪くなりやすいので注意が必要です!

まとめ

ここまで、腰椎分離症の方針やリハビリテーションについて書いてきました。

腰椎分離症は治療方針の決定がとても重要です、考え方を頭に入れながら病院の先生と相談していきましょう!

 

あきと
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参考文献

[1]西良浩一ら.脊椎の疲労骨折−腰椎分離症−.臨床スポーツ医学.27(4).411-421.文光堂.2010

[2]古賀英之ら 編.予防に導くスポーツ整形外科.文光堂.2019

[3]Sairyoら. Conservative treatment of lumbar spondylolysis in childhood and adolescence: the radiological signs which predict healing. J Bone Joint Surg Br 91(2): 206-9. 2009

[4]Terai ら.Biomechanical rationale of sacral rounding deformity in pediatric spondylolisthesis: a clinical and biomechanical study. Arch Orthop Trauma Surg 131(9): 1187-94. 2011

[5]Popovich J.M.ら.Lumbar facet joint and intervertebral disc loading during simulated pelvic obliquity. Spine J 13(11): 1581-9. 2013

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