膝内側側副靭帯(MCL)損傷とリハビリテーション

今回は膝内側側副靭帯(MCL)を損傷してしまったときの対処法について書いていきます。

前十字靭帯損傷ほど大けがではありませんが、すごく痛いですし、深刻な損傷だと手術適応になる場合もあります。

また、痛みが引きにくく難渋する場合もありますので、困るケガだと思います。

今回はそんなMCL損傷について解説していきたいと思います!

 

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膝MCL損傷とは?

膝MCL損傷とは、膝の内側にある大腿骨と脛骨に付着している内側側副靭帯が損傷(部分断裂、完全断裂など)している状態をさします(図1)。

 

膝内側側副靭帯損傷 膝MCL損傷
図1:内側側副靱帯のイメージ図

 

膝の靭帯損傷で、もっとも発生頻度の高いケガの一つです。

膝MCLは浅層・深層があり、様々な靭帯や腱と繋がっています[](図2)。

 

膝MCL 解剖
図2:膝MCLの解剖図。sMCLがMCLの浅層です。POLは後斜走繊維と呼ばれ、sMCLとPOLを剥がすと奥に深層(dMCL)があります。この図は文献1より引用しています。

 

 

損傷はI度、Ⅱ度、Ⅲ度と分類され、復帰まではI度では2~4週間、Ⅱ度では6~8週間、Ⅲ度では約3ヶ月かかると言われています。

内側側副靱帯が単独で損傷した場合、基本的には保存療法が適応されます[]。

 

 

膝MCL損傷を起こしやすいシーン

膝前十字靭帯(ACL)損傷と同じように、膝が「外反する(内側に入る)」ことで受傷してします。

他の選手と接触することで、膝が強制的に外反されるシーンが多いです(図3)。

 

膝内側側副靭帯損傷 膝MCL損傷
図3:左膝の内側側副靭帯損傷のイメージ。写真のように膝の外側からタックルに入られ、膝が外反することで内側側副靱帯の損傷が生じます。

 

前十字靭帯損傷や半月板損傷が合併している可能性もありますので、必ず病院を受診しましょう。

 

膝MCL損傷後のよくある症状

 

ほぼ100%出る症状
・膝の内側が痛い
・膝を外反(内側に入れる)すると痛い

 

約80%に出る症状
・膝を伸ばしきる/曲げきると痛い
・太ももの前/裏の筋肉に力を入れると痛い

あきと
MCLが損傷する場所(太もも側、真ん中、すね側)によって症状が少し違うんです。
損傷箇所によって、リハビリのポイントも少しずつ変わってきますね!

 

病院で行う検査

軽度の損傷の場合は、診察のみでMCL損傷と診断がつく場合もあります。

一般的には、問診(怪我した状況の確認など)、触診(痛みのある場所のチェック)、スペシャルテスト(外反ストレステスト)などを行います。

中等度以上の損傷では、MRI(磁気共鳴画像)検査で損傷の程度や損傷している場所を確認する必要があります。

 

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膝MCL損傷と診断されたら

基本的には保存療法となります。

中等度損傷の場合は、復帰段階でも靱帯の弛みが残ることが多いですので、その分膝周囲の筋力をアップさせるリハビリが非常に重要です。

重度(Ⅲ度)の損傷では、手術療法が適応される場合もありますが、専門医に相談の上判断する必要があります。

 

膝MCL損傷の保存療法

基本的にはこの保存療法でリハビリを行い、復帰を目指します!

 

保存療法のリハビリテーション

中等度の損傷をイメージしてリハビリの流れを記載しています!

炎症期(受傷後3日ほど)
RICE処置

あきと
このRICE処置が、すっごく大切です!!!
特に、「寝ている時の圧迫」を必ず行いましょう!
RICE処置の質が悪いと痛みや腫れが残り、今後のリハビリが大変になります...
リハビリ前期(3日〜3週)
・可動域を改善する!(←膝の曲げ伸ばし、周囲の筋肉のマッサージ)
・太ももの前と後の筋肉を鍛える!(←大腿四頭筋:特に内側広筋、ハムストリグスの筋トレ)
・体幹とお尻の筋肉を鍛える!(←体幹と殿筋の筋トレ)

あきと
スネ側(脛骨付着部)の損傷だと、もも裏の筋トレで痛みが出やすいので注意が必要です!
リハビリ中期(3週〜5週)
・体重をかけた筋トレをする!(←スクワット、片脚スクワット、ランジなど)
・ジョギングを開始する!
・少しずつ直線のランニングスピードをアップする!

あきと
調子が良ければ、2週間から開始できる人もいますよ。
リハビリ後期(5週〜7週)
・ステップワーク、ジャンプの練習をする!(←アジリティトレーニングなど)
・リアクション、対人動作の練習とする!(←リアクションドリル、対人練習など)

あきと
膝が内側に入ってしまわないように、しっかりと動きの練習をしましょう!
復帰期(6〜8週)
・1〜2週間かけて段階的に練習に参加しましょう!

あきと
膝に力が入っていないと、サッカーのキック動作などで痛みが残ってしまう場合があります。
思ったように痛みが引かない場合は、「患部の腫れ」や「周囲の硬さ」、「力の入り具合」などをもう一度チェックしてみましょう!

まとめ

ここまで、膝MCL損傷後の方針やリハビリテーションについて書いてきました。

膝MCL損傷は痛みが残りやすいケガですので、基本をしっかりおさえながらリハビリをしていきましょう!

 

あきと
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参考文献

[1]LaPrade et al.The anatomy of the medial part of the knee. J Bone Joint Surg Am. 2007 Sep;89(9):2000-10

[2]内側側副靭帯損傷 - 下肢のスポーツ外傷・障害 - 講座スポーツ整形外科学3.  近藤英司 編集, 中山書店, 57-62, 2021 

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